≫シナリオ学習の始め方完全ガイド
初心者でも面白い脚本を書く方法を教えます
»詳細はこちら

【ネタバレ考察】映画『ラストマイル』ロッカーに書かれた「2.7m/s→0」の本当の意味は?

映画
  • ラストマイルの内容がよくわからなかった
  • ネタバレが知りたい
  • ロッカーに書かれた「2.7m/s→0」の文字の意味を知りたい

映画『ラストマイル』は、多くの登場人物によるドラマが描かれている社会派ミステリー作品です。特に後半の解釈は人によって分かれるため、難しいと感じる方や別の考え方が知りたいという方は多いです。

この記事では、映画『ラストマイル』のネタバレや考察についてわかりやすく解説します。記事を読むことで『ラストマイル』の内容をより深く理解できます。

本記事には作品のネタバレを含みます

↓映画『ラストマイル』について深く知りたい方はこちらもチェック↓

映画『ラストマイル』とは、監督塚原あゆ子×脚本野木亜紀子が送るシェアードユニバース作品

『ラストマイル』は、2024年8月に公開された社会派サスペンス映画です。大手通販サイトの物流センターを舞台に、連続爆破事件の真相に迫るストーリーが展開されます。監督は『最愛』や『コーヒーが冷めないうちに』で知られる塚原あゆ子、脚本は『逃げるは恥だが役に立つ』や『罪の声』で有名な野木亜紀子が担当しました。

満島ひかりが主演を務め、『アンナチュラル』『MIU404』と世界観を共有するシェアード・ユニバース作品となっています。公開初日から3日間で66万2,000人の観客を動員し、興行収入は9億7,800万円とダントツの首位デビューを飾りました。エンターテインメント性と社会性を高いレベルで両立させた作品として、多くの人に評価されています。

映画『ラストマイル』のあらすじ

11月、流通業界最大のイベント「ブラックフライデー」の前夜、世界規模のショッピングサイト「DAILY FAST」から届いた段ボールが爆発する連続爆発事件が発生。爆発した荷物は、どれも西武蔵野ロジスティクスセンターから配送されたものでした。

センター長として赴任したばかりの舟渡エレナ(満島ひかり)とチームマネージャーの梨本孔(岡田将生)は、配送ベルトコンベアの稼働率を維持しながら事件の収束に向けて奔走します。事件の犯人を追う中で、物流業界の闇や劣悪な労働環境が明らかになっていきます。

映画『ラストマイル』を理解するポイント

映画「ラストマイル」を深く理解する上で、次の2点を押さえましょう。

  • 物流業界の歪な構造
  • 登場人物の過去

物流業界の歪な構造

映画『ラストマイル』では、現代の物流業界の歪な構造が明らかにされています。DAILY FASTの物流倉庫で働いているのは、社員9人に対して派遣社員が800人。社員たちは機械のように管理され、高いノルマと厳しいタイムスケジュールを強いられています。

商品配送の60%をDAILY FASTに依存している「羊急便」は、DAILY FASTに買い叩かれている現状に文句を言えません。しわ寄せは配送を業務委託する個人事業主に及びます。彼らは1件150円という単価で荷物を配送しており、留守などで受け取ってもらえない場合は報酬をもらえません。連続爆弾事件が起こった背景には、このような社会の搾取構造が大きく関係しています。

見事な伏線回収

映画『ラストマイル』では、ストーリーの至るところに伏線が張り巡らされています。それらがストーリーが後半になるにつれて、見事に回収されていくのも本作の見どころです。主な伏線は以下のとおりです。

  • エレナの存在
  • 「すべてはお客様のために」という言葉
  • 爆弾の数
  • 5年前の転落事故
  • 佐野親子の過去
  • ロッカーの暗号

上記の他にも、登場人物の些細な言動がストーリーの核心に迫る重要な伏線になっています。伏線が爆弾事件とどう関係し、どのような形で回収されるかに注目して鑑賞してください。すべての謎がすっきりと解決するわけではないことも、本作の魅力の1つです。公開以降さまざま考察が生まれ、単なるエンターテイメント作品に留まらない盛り上がりを見せています。

ぜひシーンの隅々をよく観察し、自分なりに考察して楽しんでください。

登場人物の過去

映画「ラストマイル」には多くの人物が登場し、群像劇のようにそれぞれが交差するのが特徴です。特に重要な登場人物は、次の5人です。

舟渡エレナDAILY FAST 物流倉庫のセンター長。
かつて仕事で心身を病んで休職していた。
梨本孔チームマネージャー。
日本企業の悪しき所を寄せ集めたような会社でハッカーとして働いていた。
山崎佑DAILY FAST 物流倉庫の元センター長。
仕事で心身を病み、転落事故を起こして意識不明。
五十嵐道元DAILY FAST 日本支社統括本部長。
山崎の転落事故の現場に居合わせていた。
佐野昭羊急便の委託ドライバー。
同僚ドライバーを過労で亡くしている。

彼女たちの言動はすべて過去の出来事が影響しています。細かく注目し、自分と境遇が近い人物を見つけられると、本作の事件を自分事として深く認識できます。

映画『ラストマイル』のネタバレ

映画『ラストマイル』のネタバレについて、次の3つを解説します。

  • 『MIU404』や『アンナチュラル』との絡み
  • 連続爆破事件の犯人とトリック
  • 事件の結末

『MIU404』や『アンナチュラル』との繋がり

本作は『MIU404』や『アンナチュラル』と世界を共有するシェアードユニバース作品です。ドラマを見ていなくても十分に楽しめる内容ですが、ドラマファンのためのシーンも上手く作品に組み込まれています。爆破事件の捜査を担当するのが『アンナチュラル』の毛利刑事と『MIU404』の刈谷刑事です。爆破事件の初動捜査を伊吹藍(綾野剛)、志摩一未(星野源)が担当し、山崎佑と筧まりかの存在に迫っていきます。

最初の被害者の死体解剖を行ったのはUDIラボの面々。三澄ミコトは男性とされる死体が女性であると気づきます。サプライズだったのは白井一馬(望月歩)と『MIU404』第3話の勝俣奏太(前田旺志郎)の未来が描かれていたことです。

『アンナチュラル』第7話で白井は「殺人者S」を名乗り、ミコトに自殺した友人のいじめを明らかにさせて自殺を試みます。間一髪でUDIラボの面々が阻止し、中堂は白井に「赦されるように生きろ」と言葉をかけます。『ラストマイル』で白井はバイク便のドライバーとして、久部六郎(窪田正孝)へメディカル便を届けます。

『MIU404』第3話で勝俣は、上級生のドラッグ事件によって廃部に追い込まれた陸上部員として登場します。勝俣は学校に対する鬱憤を晴らすため、部員や恋人と女子高生襲撃事件を装う虚偽の通報を行っていました。しかし、勝俣の恋人が本当に襲われてしまう事件に発展してしまいます。伊吹や志摩に恋人を助けてもらった勝俣は、『ラストマイル』で4機捜のメンバーになっており、陣馬(橋本じゅん)の相棒として登場します。

U-NEXTの無料トライアルを利用すれば、今なら『MIU404』や『アンナチュラル』を無料で観ることができます。まだドラマを観ていない方はぜひチェックしてください。

連続爆破事件の犯人とトリック

連続爆破事件の犯人は筧まりかです。筧には山崎佑という恋人がいました。山崎は5年前に「DAILY FAST」物流倉庫のセンター長を務めており、過酷な労働環境に心身ともに疲弊しきっていました。最大の繁忙期「ブラックフライデー」を前に倉庫の3階から飛び降りた山崎は現在、意識不明で病院に入院しています。

DAILY FASTは山崎の飛び降り事件を単なる落下事件として処理。恋人の自殺未遂に責任を感じた筧は、会社側の非を認めようとしないDAILY FASTに怒り、事件を企てます。厳重なセキュリティの物流センター内に爆弾を持ち込み、仕掛けることは不可能でした。そこで筧は配送代行システムを利用し、外部で爆弾を仕掛ける方法を思い付きます。

配送代行システムとは、出品者の商品をDAILY FASTが代行して配送する仕組みです。爆弾を仕掛ける流れは次のとおりです。

  1. ブラックフライデー前にセール品を購入する
  2. 購入した商品に爆弾を仕掛ける
  3. 配送代行商品として出品することで、爆弾をセンター内に持ち込む
  4. 物流スタッフとして倉庫に入り、爆弾の箱の配送代行商品ラベルを剥がす
  5. 爆弾が一般のセール品としてどこかの購入者へ配送される

以上のトリックを使い、筧はDAILY FASTの商品に爆弾を仕掛けることに成功しました。

事件の結末

爆弾事件の犯人が筧だと分かったとき、彼女はすでに自殺していました。彼女はホームレスから男性の戸籍を買い、最初の爆破事件の被害者として死んでいたのです。エレナには山崎と同じようにDAILY FASTの過酷な労働で精神を病んだ過去がありました。

エレナは山崎の飛び降りた意図が物流センターの稼働を止めることにあったと気づき、羊急便と結託してストライキを起こしてセンターの稼働を停止させます。ストライキの結果、物流システムは停止。委託ドライバーの単価が150円から170円にアップします。

エレナはDAILY FASTを退職し、代わりに梨本がセンター長に就任しました。

映画『ラストマイル』の考察

映画『ラストマイル』について、次の2つを考察します。

  • 「ラストマイル」というタイトルの意味
  • 「DAIRY FAUST」に込められた意味
  • ロッカーに書かれた「2.7m/s→0」の文字の意味

「ラストマイル」というタイトルの意味

映画のタイトル「ラストマイル」は、物流サービスの用語で「荷物を顧客に届ける最後の区間」を意味します。消費者と直接的なつながりを持ち、人間の温かみや思いやりを感じられるやりがいのある仕事です。最後の爆弾の被害者を出さずに済んだのは、「ラストマイル」である配達ドライバーの佐野親子の活躍によるものでした。

にもかかわらず、配達ドライバーの存在は軽視され、現代社会のしわ寄せに最も苦しんでいるのが現状です。本作の爆弾事件は人間を軽視し、利益を追求するDAILY FASTに対する恨みによって生まれました。

しかし筧が爆弾を仕掛けたのは会社ではなく、消費者が購入した商品でした。私たちは購入した商品が送料無料で数日のうちに届くことに当たり前になり過ぎています。物流業界の歪な構造を作り出した責任は、便利さを求める私たち消費者の”欲望”にあるのだと、筧は訴えたかったのかもしれません。

だとすると、本作で描かれる事件を自分事として捉え、日々荷物を届けてくれる「ラストマイル」の生活を考えて行動することが、私たち消費者ができる唯一のことではないでしょうか。

「DAIRY FAUST」に込められたメッセージ

事件の犯人が作成したDAIRY FAST社の偽広告を「DAIRY FAUST」としたのには、現代の消費社会や効率至上主義への批判が込められています。FAUST(ファウスト)は、16世紀頃にドイツで広まったファウスト(FAUST)伝説を意識してつけられた可能性が高いです。

ファウスト伝説とは、主人公・ファウスト博士が悪魔と契約を結び、魂と引き換えに現世の快楽を得る物語です。犯人はDAIRY FAST社を「すべてはお客さまのために」という魔法の言葉で人々の魂を奪う悪魔だと訴えたかったのかもしれません。そして悪魔と契約を結んで欲望に溺れる私たち消費者がファウスト博士であるというメッセージなのでしょう。

さらに、ファウスト博士が契約を結んだ悪魔の名前はメフィストフェレスです。メフィストフェレスの名は「MIU404」の第10話でも志摩が久住を形容する際に言及されます。両作品の関連性や野木亜紀子さんの作家性を感じられるのも、本作の見どころの1つです。

ロッカーに書かれた「2.7m/s→0」の文字の意味

「2.7m/s→0」は冒頭シーンにも登場する、爆弾事件の真相に迫る重要なメッセージです。物流センターにある山崎佑のロッカーには「2.7m/s→0」の文字があり、矢印の下には70kgと書き残されていました。このメッセージを見たエレナは次のことに気がつきます。

  • 2.7m/s=倉庫で稼働するベルトコンベアの速さ
  • 70kg=ベルトコンベアの耐荷重(成人男性の平均体重くらい)
  • 0=倉庫の稼働率

以上のことから、山崎が飛び降りた目的はベルトコンベアを止めることにありました。山崎の目的に気づいたエレナは、かつて自分も同じようにブラックフライデーを恐れ、心身を病んで休職していた過去を思い出します。山崎の意思を引き継いだエレナは、飛び降りた彼とは別のストライキという形で稼働率を0にするのでした。

とはいえ、ロッカーの文字の意味は本作で明示されておらず、真実は観客に委ねられています。ぜひ本作を見て山崎の真意を想像してみてください。

映画『ラストマイル』に関するよくある質問

映画『ラストマイル』に関するよくある質問をまとめました。本章では以下の3つに回答していきます。

  • 映画『ラストマイル』に原作はある?
  • 『アンナチュラル』や『MIU404』を観ていないと楽しめない?
  • 本編に名前だけ登場するやっちゃんとは誰?

映画『ラストマイル』に原作はある?

映画「ラストマイル」は、原作が存在しないオリジナル作品です。監督の塚原あゆ子と脚本の野木亜紀子がタッグを組んで制作されており、TBS系のドラマ「アンナチュラル」と「MIU404」と同じ世界観を共有するシェアード・ユニバース作品となっています。

ストーリーは、物流業界の大イベント「ブラックフライデー」の前夜に発生する連続爆破事件を描いており、登場人物たちが事件解決に奮闘する様子が描かれています。

『アンナチュラル』や『MIU404』を観ていないと楽しめない?

映画『ラストマイル』を楽しむために、ドラマ『アンナチュラル』や『MIU404』を観ている必要はありません。世界観を共有する作品のため『アンナチュラル』と『MIU404』のキャラクターが登場しますが、映画自体は独立したストーリーとして成立しています。

ドラマのストーリーやキャラクターの背景を知らなくても十分楽しめますが、観ているとより楽しめる作品でもあります。ドラマを観ておくことで、より深い理解やキャラクターへの愛着を感じられるでしょう。映画を観た後にドラマを観るのも1つの手段です。

本編に名前だけ登場するやっちゃんとは誰?

映画「ラストマイル」に登場する「やっちゃん」は、羊急便の委託ドライバーである佐野昭(火野正平)が尊敬する宅配員です。やっちゃんは非常に優秀なドライバーで、お弁当を10分で食べ、1日に200個の荷物を運び、月に50万円を稼ぐというバイタリティに溢れた人物でした。

しかし、物語が進む中で、やっちゃんは過労で亡くなったことが明らかになります。佐野昭の息子である佐野亘(宇野祥平)は、やっちゃんを尊敬しつつも、過労で倒れた彼を哀れに思い、働き方について異なる考え方を持つようになります。

やっちゃんの存在を通して、企業に身を捧げて働く親世代と、ワークライフバランスを重視する現代との違いが描かれています。また、やっちゃんは山崎佑の父親ではないかという意見もあり、ネット上ではさまざまな考察が行われています。

まとめ

映画『ラストマイル』は、物流業界の裏側を暴く社会派サスペンスとして、多くの観客を引きつける作品です。満島ひかり主演で、塚原あゆ子監督、野木亜紀子脚本のシェアードユニバース作品として、他のドラマ作品とのリンクも楽しめます。

物語の中では、物流センターの厳しい労働環境や、それに起因する連続爆破事件が描かれています。特に、ラストマイルと呼ばれる配送の最終段階に関わる人々の苦労や無視されがちな存在がテーマとなっています。物語の結末で、物流業界の改革が進む一方で、犯人の動機や事件の深層は、私たち消費者にも関わる問題として捉えられています。

この映画を観る際には、物流業界の現実と、登場人物たちの背景や思惑を深く考えることがポイントとなります。特に「2.7m/s→0」という暗号めいたメッセージが示す意味を解釈することで、物語の真実に迫ることができるでしょう。ぜひ劇場に足を運んでください。

↓映画『ラストマイル』についてもっと知りたい方はこちらをチェック↓

タイトルとURLをコピーしました