みなさんこんにちは、ムービー3分クッキングの時間です。
今回はシド・フィールド著『映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術』について解説していきます。
みなさんはシド・フィールドという方をご存知ですか?
ご存知ない方も脚本家を目指す方なら「三幕構成」という言葉を一度は耳にしたことがあるのではないかと思います。
シド・フィールドはアメリカ合衆国の脚本家、プロデューサーであり、シナリオ講師として知られています。ウォルト・ディズニー・スタジオなどの脚本コンサルタントを歴任し、全米脚本家協会で初の殿堂入りを果たしました。
彼は三幕構成を理論化した人物で、本書は22カ国に翻訳され、日本でも脚本に関する本では最も広く読まれている一冊です。
つまりそんな本書は脚本家を目指すなら必ず読まなくてはならない本いうことです。
まさかそんな本書をまだ読んでいないということはありませんよね?
まだ読んでいない? 買おうか迷っている?
そんな方でも大丈夫です。この記事を最後まで読むだけでこの本の要点が分かり、読書の手助けにもなりますので最後までお付き合いください。
シド・フィールドの脚本術について
シドフィールドの脚本術は現在3冊刊行されています。
1では三幕構成など脚本の基礎知識と、書くまえの準備について
2では脚本の実践的な方法について
3では書いた脚本を書き直す方法について
が解説されています。今回解説するのはそのうちの1になります。
三幕構成について
三幕構成とは、本書の著者シド・フィールドによって理論化されたもので、ストーリーを発端、中盤、結末の3つの幕に分ける構成方法です。
この構成は現在多くの映画され、ドラマ、小説、漫画、ゲームなど様々な分野に応用されています。
三幕それぞれの役割を順に見ていきましょう。
一幕 発端・設定
一幕では状況の設定が行われます。
- どんな登場人物が出てくるのか
- どんな世界観なのか
- どんなテーマ、葛藤があるのか
みなさんは初対面の人と会うときに自己紹介をすると思います。それと同じように一幕では観客にその作品を紹介するのです。
映画を120分だとすると、一幕は最初の30分前後の長さになります。一幕は必然的に情報量も多くなる上に、いかに観客の心を掴めるかが作品のカギになります。特に冒頭の10分は気合を入れて書くように心がけましょう。
二幕 中盤・葛藤、対立
二幕では葛藤や対立が描かれます。
主人公が目的を達成するために奮闘し、障害を乗り越えたり、挫折したりと、ストーリーの起伏の大きいパートです。
長さも60分前後と一番長く、観客をどれだけ楽しませることができるか脚本家の腕が試されます。
三幕 結末・解決
三幕は解決を与える役割を持ちます。
主人公の目的が達成されたかどうかの他に、変化や成長が描かれます。
長さは30分前後と一幕と同じですが、現代は年々短くなっている傾向にあります。
テーマ(主題)を決める
脚本家にとって、脚本はなんのためにあるのでしょうか?
それは観客にテーマを伝えるためにあります。脚本を書く前にまずはテーマを決めていきましょう。
- あなたは何ついて、もしくは誰について書きたいですか?
- キャラクターについて?
- ある特定の感情について?
- 自身や家族、友達が経験した出来事について?
みなさんはふとした瞬間に「これ面白いかも」というアイデアが浮かぶことがあると思います。
しかし、例えどんなに面白いアイデアを持っていたとしても、アイデアだけでは奥深い脚本を書くことはできないのです。
大抵の人はあるアイデアをひとつ思いついた状態で、衝動的に脚本を書き始めてしまいます。もちろんわたしもそうでした。しかしそれでは途中で必ず何を書いていいのか分からなくなってまいます。
アイデアが浮かんだら、それをテーマにまで落とし込んでいきましょう。
素材を集める
テーマがなかなか見えてこないときは、気になる人や物事についての素材を集めましょう。
本やネットで情報を集めたり、似たような映画やドラマを見たり、可能なら現地に足を運んだり、人に会って話を聞いたりしましょう。素材を集めるうちに方向性が定まっていき、あなたの中で伝えたいテーマが見えてくるはずです。
素材は多ければ多いほど脚本に反映することができます。素材の多さは作品のリアリティや次に紹介する登場人物の人格を創造する上でも役に立ちます。
魅力的な登場人物を作る3つの要素
脚本を書き始めた頃はどう物語を展開させるかばかりに気を取られてしまいます。しかし物語の展開を考えてから登場人物を作ると、結果として都合の良いリアリティのない人物が出来上がってしまいます。
物語の展開より大事なこと、それは魅力的な登場人物をつくることです。魅力的な登場人物を作ることができれば物語は自然と展開していきます。
次から魅力的な登場人物を作る4つの要素を紹介していきます。
ドラマ上の欲求を持っている
その人物が手に入れたい、成し遂げたいと思っていることです。この欲求を満たすために登場人物は行動し、物語が展開していきます。
『チャイナタウン』でのギテスの欲求は事件の真相を突き止めることにあります。『鬼滅の刃』での炭治郎の欲求は鬼になった禰豆子を人間に戻すことにあります。『愛の不時着』でのセリの欲求は、前半は韓国に帰ることでしたが、後半は
書き手が登場人物の欲求を掴めていなければ、観客に伝えることはできません。その人物はどんな欲求を持っているのか
独自の考え方、ものの見方を持っている
その人物が持つものの見方、世界観のことです。人間はそれぞれの価値観を持っています。学生には学生の、主婦には主婦の、犯罪者には犯罪者の考え方があります。考え方に正しいとか間違いはありません。神様がいると考える人も、いないと考える人も、よく分からないと考える人も、これら三つの考え方は自分の世界観の中では真実なのです。考え方やものの見方はその人の育ってきた環境や歴史によって形成される個性です。
変化や変身を遂げること
物語の主要人物は行動を起こさなくてはなりません。なぜなら行動によってしか人の心(=観客の心)を動かすことができないからです。
みなさんは口だけ立派なことを言いながら、自分は何もせず楽をしているような上司を好きになることができますか?
できませんよね。口では多くを語らずとも、誰よりも懸命に働く上司の姿を見れば、部下も感化されてやる気になるはずです。
行動が大切であることは伝わったと思います。その行動を起こすのに必要なのが、変化や変身なのです。
人は心境の変化や環境、人間関係の変化などによって行動を起こします。何の変化もしない受身の人物はキャラクターとして弱いです。
よく書いているうちに主人公の存在が薄くなり、サブキャラクターに興味が移っていくことがあると思います。もし物語の主人公が誰かわからなくなったときは「誰が一番変化・変身を遂げているか」を考えるといいでしょう。主人公は作品の中で一番変化を遂げる人物でなくてはなりません。
ストーリーラインを作る
テーマや登場人物が固まってきたら、ストーリーラインを作っていきます。
しかしどれだけテーマや登場人物がしっかりと決まっていても、いざストーリーにしてみると上手くいかないということがありませんか?
わたしもそうです。ストーリーをどう始めたらいいかがわからず、なんとなく書き始めては上手くいかずに最初からやり直すという経験が山のようにあります。
ではどうすればストーリーを上手く作ることができるのでしょうか?
それは最初にエンディングを決めることです。
脚本を「始める」ためには「終わり方」を知ろう
みなさんはストーリーを考えるとき、まさかオープニングから順に考えていませんよね?
ストーリーを頭から考えることは、志望校を決めずに受験勉強するようなものです。自分の行きたい学校が決まっていれば、どれくらいのペースでどんな勉強をすればいいのか見当をつけることができますよね。それと同じで、ストーリーもまずは結末を設定してしまうのです。
ストーリーラインを作る上での具体的な順番はこんな感じです。
- エンディング
- オープニング
- プロットポイントⅠ
- プロットポイントⅡ (※プロットポイントについては後述します)
エンディング=ゴールが決まってしまえば、あとはそこへ向かって走るだけです。
とはいえ、最初から完璧なエンディングを考えることはできません。最初に決めたエンディングは途中で変わるものだと気楽に捉えてください。抽象的なイメージでも、小さなアイデアでも構いませんので、エンディングとして成り立つようなものを書き出すだけでも大丈夫です。
プロットポイントを見つける
エンディングとオープニングが決まったら、次はプロットポイントを考えていきます。
プロットポイントとは、本書では「ストーリーのアクションを加速させ、別の方向へと行き先を変えるような事件、エピソード、出来事」と説明されています。
要するにプロットポイントはストーリーの転換点のことです。
ストーリーの転換点は作品にいくつか存在しますが、ストーリーラインにおいて重要なのは、幕と幕を繋ぐふたつのプロットポイントになります。
一幕の終わりにあり、二幕への転換点をプロットポイントⅠ、二幕の終わりにあり、三幕への転換点をプロットポイントⅡと呼びます。
桃太郎を例に出すと、おばあさんが桃を切ろうと赤ん坊が出てきて「桃太郎」と名付けるところがプロットポイントⅠ、鬼ヶ島を見つけるところがプロットポイントⅡとなります。
これでストーリーの大枠が完成しました。
脚本を書く前にここまで準備ができていれば、途中で書けなくなったりすることもなくなるでしょう。
繰り返しますが、この順番はあくまで一番効率のいい方法というだけで、強制するものではありません。最初に魅力的なキャラクターが浮かんだり、インパクトのあるオープニングのイメージが浮かぶこともあるでしょう。
しかし、
- この魅力的なキャラクターは最後どうなってしまうのか?
- このオープニングはどんなエンディングに繋がるのか?
と常にエンディングを意識するよう心がけましょう。
最後に
いかがでしたか?
本書には今回紹介しきれなかった部分も数多くあります。興味が湧きましたらぜひ本書を手に取ってみてください。
このブログでは脚本に役立つ情報を発信しています。
本書の他にも様々な脚本に関する本も紹介しているのでよろしければ覗いてみてください。
最後までお付き合いいただきありがとうございました!