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『素晴らしい脚本を書くためにあなたに必要なワークブック シド・フィールドの脚本術』を要約・解説

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みなさんこんにちは、ムービー3分クッキングの時間です。

今回はシド・フィールド著『素晴らしい脚本を書くためにあなたに必要なワークブック シド・フィールドの脚本術』について解説していきます。

シド・フィールドの脚本術は現在3冊刊行されています。

  • 1では三幕構成など脚本の基礎知識と、書くまえの準備について
  • 2では脚本の実践的な方法について
  • 3では書いた脚本を書き直す方法について

が解説されています。

今回はそのうちの2を取り上げます。

1についてはすでに解説していますので、まだご覧になってない方はそちらを先に読んでいただけると、今回の記事をより理解しやすくなると思います。

『映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術』を要約・解説

それでは内容に入っていきましょう。

あらすじを書く

みなさんはあらすじを書くことの重要性をどれほど理解しているでしょうか。

  • あらすじは頭の中にあるから書く必要がない
  • あらすじを上手くかけても脚本が面白くなくちゃ意味がない

このように考える人は意外と多くいます。確かにその考え方は一理あります。

ではそんなみなさんに質問です。

  • あなたは自分が今書いているor書こうとしている作品がどんな話かと聞かれて答えることができますか?
  • 何についての、誰についてのストーリーなのか、数行で簡潔に言うことができますか?

この質問にドキッとした方もいるのではないでしょうか。安心してください、私もそうでした。

脚本を書いていて、混乱して書けなくなる大半の原因がストーリーを把握しきれていないことにあります

考えてもみてください。自分で自分のストーリーを把握していなければ、他人にきちんと伝わるはずないですよね。

とはいえ、自分のストーリーを客観的に把握することは至難の業です。

ではどうすれば自分のストーリーを把握することができるのでしょうか。

その答えは、あらすじを書くことなのです。

あらすじは自分のストーリーを把握するために書く

これは著者が若い頃の話です。

ある日、大まかなアイデアが浮かび、すぐさま脚本にとりかかりました。最初の30ページは上手くいきましたが、それ以降どういう方向にしたらいいのかわからなくなり、それから数週間何も書けず、スランプに陥りました。

それを救ったのが映画会社の脚本部に勤める友人の一言でした。著者が悩みを打ち明けると友人はシンプルに一言、

「で、いったいどういう話なんだい?」

著者は友人にストーリーを思い出しながら話し、適切なアドバイスをもらいました。家に帰って、ストーリーを簡単なあらすじにまとめてみました。するとストーリーが明確になり、その瞬間にスランプは消えてなくなったのです。

著者はそのとき「脚本の執筆で一番難しいのは、何を書くかを知ることだ」と気づいたそうです。

あらすじの書き方【あらすじは4ページで書け】

あらすじの重要性はわかった。けどどうやって書けばいいの?

そんな方に向けてあらすじの書き方について解説していきます。

著者はあらすじは4ページに収めるように書くのがベストだと言います。

内訳はこんな感じです。

  • オープニングの再現(0.5P)
  • 残りの一幕の要約(0.5P)
  • プロットポイント1の再現(0.5P)
  • 主人公が直面する障害を中心に二幕の要約(1P)
  • プロットポイント2の再現(0.5P)
  • 三幕の要約(0.5P)
  • ラストシーンの再現(0.5P)
  • そもそも一幕、二幕って何?
  • プロットポイントって何?

という方のためにざっくりと説明しますと、

  • 一幕・二幕・三幕とはストーリーを状況設定、対立、解決と三幕に分けて考える三幕構成という理論のこと
  • プロットポイントとはストーリーの転換点のことです。

詳しく知りたい方は1の記事をご覧ください。

『映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術』を要約・解説

一幕のあらすじを書く

まずはオープニングから書いていきます。

  • 一幕では最初の10ページで観客をいかにストーリーに引き込むかが大切です。少し具体的に、場所はどこか、主人公は何をしているかなど、大体でいいのでシーンを再現するように書いてみましょう。
  • 次にオープニング後の一幕で何が起こるか、アクションの流れを簡潔に要約します。
  • そしてプロットポイント1。一幕から二幕へ繋がるストーリーの転換点を再現します。

ここまでで約1.5P。主人公の性格や目的がはっきりしているか、ストーリーが前進しているか確認してください。

二幕のあらすじを書く

二幕は主人公の葛藤を描きます

  • 主人公の目的を阻む障害や困難はどんなものか考えましょう。必要であれば別紙に主人公が遭遇しそうな障害を4つ書いてみましょう。障害は物理的、精神的どちらも考えられます。
  • 障害を思いついたらあらすじに組み込み、主人公がどうやってそれを乗り越えていくか簡単にまとめます。
  • 細かく書きすぎると長くなってしまうので1Pに収まるように頑張ってみてください。
  • 次にプロットポイント2。三幕の解決へと向かう転換点を再現しましょう。必要であれば会話などを書いても構いません。

三幕のあらすじを書く

三幕では解決が描かれます

  • 一幕で設定した主人公の目的はどうなるか。主人公は死ぬのか、生きるのか、ストーリーの結末と三幕の流れをシンプルに0.5P程度で要約しましょう。
  • 0.5Pでラストシーンを再現してみてください。現時点で思いつくラストシーンで構いません。

あらすじを書くときの心得

これであらすじの完成です。

最後にあらすじを書くときの心得をお伝えします。

  • あらすじはあくまであらすじ。あらすじはゴールではなく、いいスタートを切るための準備。完璧を目指さず思いつくままに書くべし
  • 最初は長くなっても気にするな。2回3回と書き直しながら洗練させるべし

あらすじの段階では登場人物の性格やストーリーがきちんと定まっていません。最初は8ページや10ページになってしまったり、内容に納得いかなかったりすると思います。

しかしあくまであらすじ。みなさんは面白い脚本を書けさえすればいいのです。あらすじはそのための準備と捉え、書くだけ書きましょう。その都度見返して、無駄な部分を削りながら洗練させればいいんです。あらすじは完璧である必要は全くありません。

あらすじができたら、ようやく脚本を書く段階までたどり着きました。

丸腰のまま挑んでいたこれまでと違い、私たちにはあらすじという地図があるので、大きく道を外れるということもないと思います。

それでは第一幕から書いていきましょう。

第一幕を書く

第一幕の主な役割は状況設定です。

映画一本を120ページとすると、第一幕は約30ページの長さになります。長さが短い割に情報量の多いパートになるので、難易度はかなり高いです。

第一幕で観客に伝えるべき情報として、

  •  誰についてのストーリーか(主人公は誰か)
  •  ドラマの前提は何か(何についてのストーリーか)
  •  ドラマの背景となる設定
  •  主人公の目的(ドラマ上の欲求)は何か

が挙げられます。これらが欠けていると、視聴者はどのようにあなたの作品を見ればいいかわかりません。次から具体的にどのように一幕を構成していけばいいのか、深く掘り下げていきます。

最初の10ページ

オープニングは一幕の中でも特に重要なシーンです。オープニングで観客の心を掴めるかで作品の良し悪しが大きく変わってしまいます。

著者が制作会社の脚本部で部長をしていたとき、2000本以上の脚本に目を通しました。しかしその中でスポンサーに映画化を薦められるのはわずか40本でした。この40本に共通して優れていたのが最初の10ページできちんと設定が行われていることでした。

最初の10ページは練りに練ること。最初の10ページが上手くいけば、その後のストーリーは正しくシンプルにわかりやすく展開していきます。

次の10ページ

次の10ページでは主人公に焦点を当てます。主人公はどんな人物で、どんな問題、どんな葛藤を抱えているのか。この10ページで主人公の目的や問題の兆候が描けるといいです。

最後の10ページ

最後の10ページはプロットポイント1が中心になります。主人公の問題・葛藤が明確になり、そして二幕へと劇的に繋がるようなプロットポイントを書きましょう

現実的な問題として、書いているうちにプロットポイントがあらすじのときと変わってしまうこともよくあります。その場合は最初に決めたプロットポイントを守るのではなく、柔軟な気持ちでもう一度プロットポイントを基準にして一幕を構成し直しましょう。

第二幕を書く

二幕では主人公の目的や葛藤を阻む障害が現れ、それを乗り越える様が描かれます。60ページとどの幕よりも長く、書くのが一番難しいパートになります。

二幕を書く上で主人公がどんな欲求を持ち、どんな葛藤を抱えているかが明確になっていることが何より重要になります。これが明確になっていないと無駄に長くなったりスカスカで中身のない二幕が出来上がってしまいます。

二幕を構成する上でポイントとなるのがミッドポイントです。

ミッドポイントを見つける

本書より引用

ミッドポイントとは二幕の前半と後半を分ける転換点で、ストーリーの真ん中あたりにきます。

ミッドポイントを置くことで、長くて退屈になりがちな二幕を前半と後半に分け、ストーリーに統一感と締まりが生まれます。

要するに、三幕構成といえど結局四幕で考えているとイメージするとわかりやすいです。

ちょっと待って、これって起承転結じゃない?

そう思ったあなた。おっしゃる通りです。

第二幕を承と転に分けて、それらの転換点がミッドポイントになるイメージです。

脚本を書いていると三幕構成と起承転結の何が違うの? どっちが正しいの? という疑問を一度は持ちますが、基本的にはどちらも同じということですね。

ミッドポイントの例【愛の不時着 第1話】

ミッドポイントについて、説明だけではわかりづらいと思うので『愛の不時着』の第1話を例に挙げましょう。

『愛の不時着』を例に挙げる理由は多くの人が観ているだろうということと、私がこのドラマを単純に好きだからです。

『愛の不時着』はセリとジョンヒョクのラブストーリーですが、1話の主な見どころは北朝鮮に不時着したセリが無事に韓国へ帰ることができるのかにあります。

第1話を簡単に三幕構成で表すとこうなります。

第一幕:人物紹介や状況設定

第二幕:セリとジョンヒョクの出会い。第五中隊に追われながら韓国に帰ろうとするセリ

第三幕:北朝鮮の軍人舎宅村に辿り着くセリ。チョルガンに見つかりそうになるセリをジョンヒョクが助ける

プロットポイント1:セリがパラグライダー事故に遭う

プロットポイント2:森を抜けてある村(軍人舎宅村)に辿り着くセリ。

それでは第1話のミッドポイントはどこあるでしょうか?

第二幕の、北朝鮮に不時着したセリが韓国に帰ろうとして、たどり着いた先が北朝鮮の軍人舎宅村だった。この真ん中に位置するシーンはどこでしょうか?

それは分岐点のシーンです。

二幕の前半、どうにかして韓国に帰りたかったセリは、右に行けば帰れると言ったジョンヒョクの言葉よりも、自分を信じて左に進みます。それによって後半、セリは第五中隊に追われることになり、非武装地帯を抜けると軍人舎宅村に辿り着きます。

(まあ、1話でのセリの選択は間違いだったわけですが、それによってにジョンヒョクとの愛が育まれることになるわけです。だから結果的には正しかったんですよねえ……とファンの戯言はこれくらいにして……)

なんとなくミッドポイントについてわかっていただけましたか?

イマイチわからなかった方は実際にドラマを観て探してみてください。まだ観たことがない方も『愛の不時着』はシナリオを学ぶ上でもよくできたドラマなのでぜひご覧ください。シナリオ本も出ていますので、気になる方はそちらもチェックしてください。

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第三幕を書く

いよいよ最後、第三幕です。第三幕では登場人物の性格やストーリーも明確になっているので、一番書くのが楽なパートになります。

第三幕で一番重要なことは結末を描くことです。結末とは単にストーリーの終わりではなく、シナリオ自体の解答=解決を意味します。詳しく掘り下げていきましょう。

どんな結末にするか

あなたがあらすじで予定していた単純な結末は、脚本を執筆するうちに異なるものになっているかもしれません。同じ場合でも第二幕まで執筆できたら一度立ち止まって、このストーリーを解決するにはどんな結末が必要か考えてみてください。

結末が決まったら、それに必要な登場人物の行動が見えてきます。それをストーリーラインに合わせて構成していきましょう。

結末に迷ったら高いラストを目指せ

結末をどうするかはあなた次第です。ハッピーエンドが全て正しいわけでも、バットエンドが間違いというわけでもありません。

とはいえ、主人公の葛藤が深く、ストーリーが複雑なほどどのような結末にすればいいか迷ってしまうと思います。

どんなに「正解の」結末を考えたところで答えは出ないでしょう。あなたのストーリーに合った、あなたなりの正解を見つければいいのです。

しかし、もし結末に迷ったら「ラストは高いところを目指せ」と著者は主張します。

脚本家には観客に影響を与え、観客を変える責任があります。

脚本を書くことは新しい可能性を生むチャンスです。あなたは脚本を通して、希望や団結や自尊心を基盤とし、個性や人間性を重んじ、より高い意識や次元に到達する未来の世界を作るチャンスを掴んでいます。

死や自殺、破壊、暴力といった悲観的な結末を安易に選んではいけません。それは単に楽観的なハッピーエンドにしろという意味ではありません。私たちの生きる時代や価値観を反映するような結末を描いてほしいというのが著者の願いです。

最後に

いかがでしたでしょうか?

本書には今回紹介しきれなかったものもたくさんあります。脚本家を目指すみなさんにはおすすめの本ですので、気になった方はぜひ本書を手に取ってみてください。

他にも脚本に関する本をいくつか紹介していますので、よろしければ覗いてみてください。

最後までご覧いただきありがとうございました!

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