みなさんこんにちは、ムービー3分クッキングの時間です。
この記事では、
- ストーリーが最後まで書けない
- ストーリーの考え方が知りたい
という人に向けて、
初心者の方にもわかるようにストーリーの作り方について5つのステップで解説します。
わたしも脚本を書き始めた頃は、書いていてストーリーをどう展開していいかわからなくなって結局ボツにした経験が何度もありました。
この記事を読めばみなさんがそういう失敗をすることはなくなると思うので、最後までお付き合いください。
ステップ0:すぐに書かない
まずみなさんに伝えたいこと。
それは、
「書きたいと思ったらまず書くな!」
です。
初心者にありがちな失敗として、
「こんな話面白そうかも、よし書くぞ〜!」
と初動のテンションに任せて頭から書き始めて、
「なんか思ってたのと違う……この後どう書けばいいんだろう」
と、時間をかけて書いた作品を結局ボツにしてしまいます。
みなさんもそういう経験ないですか? わたしはよくありました。
この失敗を防ぐには、いきなり作品を書き始める前に、
- 何を書きたいか明確にする
- 書きたいものについて調べる
- 全体の構成を考える
を行なってください。
「めんどくさ……」と思うでしょう。ですがよく考えてみてください。
例えば、家を建てる前には必ず設計図を書きますよね。
設計図なしに家は建ちません。
そんなことをすれば必ず大きな欠陥が見つかりますし、仮に建ったとしても住みたいとは思わないでしょう。
- 地震で崩れる心配はないか
- 住みやすい間取りか
- 長い年月に耐えられるか
これらを入念にチェックするのが設計です。
家を建てる時間よりも設計図を作るほうに時間がかかります。作品作りもそれと同じです。
まずはしっかりとストーリーの設計図を作ってから作品を書き始めましょう。
ステップ1:テーマを決める
まずはその作品を通して何を伝えたいか=テーマを考えます。
テーマとは家づくりにおける柱です。
柱がないと頑丈な家ができないように、しっかりとしたテーマがなければ作品全体が不安定になってしまいます。
- いきなりそんな重要なこと決められない
- 書きたいキャラやシーンはあるけどテーマはない
と思うかもしれません。
まずは仮でもいいですし、途中で変わっても大丈夫です。
「愛」というテーマをぼんやりでもいいから仮で決めてしまうと、書いているうちにその「愛」が家族に対してなのか恋人なのか人間全体なのか自分の中で自然とはっきりしていきます。
逆に、書きたいキャラやシーンが先にあるなら
- そのキャラやシーンを描くことで何を伝えたいか
これを深掘りして考えてみると、あなたが書きたいと思っているテーマが見えてきたりします。
テーマは深く考えすぎない
初心者の方はテーマを考える上で、
- 誰も考えたことのないオリジナルなテーマにしたい
と考え込んで、いつまでも決まらないことがあります。
新しいテーマなんかそうないですし、多くの人に受け入れられるテーマとは古くからあって数えるほどしかないです。
『鬼滅の刃』の大きなテーマは「家族愛」、『愛の不時着』も「愛に国境はない」というありがちテーマですが、キャラや設定の新しさによって絶大な人気を獲得しました。
多くの人に受ける作品とは古くからあるテーマにキャラや設定の新しさが加わることで生み出されます。
みなさんもテーマはありがちでOK、キャラや設定の新しさで勝負! これを意識しましょう。
ステップ2:調査する
テーマが決まるとジャンルや設定など、ある程度作品の方向性も定まってきます。
そこで次は自分が書きたいと思うものについて徹底的に調べます。
具体的には、
- 似たジャンル作品をみる
- 関連書籍や記事を読む
- 人に聞いたり現地で体験する
をやっていきます。
似たジャンルの作品を見る
自分が書きたいものと同じジャンルや似た設定の作品を観て勉強しましょう。
その際に自分が好きなものや興味のある作品だけ選んではいけません。
必ず受賞作や古典など、世間で名作と言われる作品を観てください。
なぜならそれが最適解であり、あなたはそれを目標に作品を書かなくてはいけないからです。
「万人受けする作品は興味ないんだよね〜」
確かに作品の好みは人それぞれです。
しかし、みなさんはこれから書く作品がコンクールで賞を取ったり、多くの人に面白いと思ってもらうことが目標だと思います。
それなら賞を取る作品がどんなものか、観客はどんなところを面白いと感じるのか分析しなくてはいけませんよね。
具体的な分析方法については別の記事で書いているのでそちらをご覧ください。
関連書籍や記事を読む
みなさんも作品を書く前にネットの記事や本である程度調べてから書くと思います。
なので当たり前のことと思うかもしれませんが、調べるコツとして、
- 出来るだけ多くの文献にあたる
を特に意識してほしいと思います。
これをすることによって、
- そのテーマの本質が理解できる
- さまざまな意見を知ることで作品に深みが出る
というメリットがあります。
本を1、2冊読んだだけではどうしても情報に偏りが出てしまいます。
全て精読するのは時間的に難しいかもしれませんが、10冊ほど目を通すことができれば、
- 「この情報は全てに書かれているから重要なんだな」
- 「この主張はさっきのとは正反対だけど、確かに納得できる部分もあるな」
- 「主人公の敵役に反対のテーマを主張させたら面白いかもしれない」
とただ知識が増えるだけでなく、テーマに対する認識が変わったり、作品に深みを出すことができるようになります。
ステップ3:主人公を決める
テーマが決まりその調査が終わると、みなさんの脳内にはストーリーの輪郭や登場人物像がある程度出来上がってきていると思います。
ですが書き始めるのはまだ先です。
次に行うのは「主人公を決める」です。
主人公の条件
主人公は物語になくてはならない存在です。
観客は主人公に共感することで物語に没入し、「これは自分の物語だ」と感じることができます。
「主人公は最初から決まっているからわざわざ決めるまでもないよ」
と思うかもしれませんが、初心者の方は登場人物全員を愛するあまり、
- 書いているうちに主人公が変わる
- 読んでいて誰が主人公かよくわからない
という失敗をやってしまいがちです。
反対に主人公を別の登場人物に変えたら作品が良くなるということもあります。
なのでどんな登場人物が主人公に相応しいのか、主人公の条件をお伝えします。
主人公に相応しい登場人物の条件は、
- テーマを背負っている
- 葛藤を抱えている
- 変化している
の3つです。
テーマを背負っている
これは当たり前と思うかもしれませんが、改めて大事なことです。
極端な例ですが、「死」をテーマにしているのに主人公が海外で料理修行を始めたら観客は「?」ですよね。
「死」がテーマならきちんと死に直面する人物が主人公でなくてはダメです。
葛藤を抱えている
「葛藤」は脚本を書くうえで一度くらいは耳にしたことがあるかもしれません。ですが、葛藤とは具体的にどういった事なのか、少し意味が掴みくいんじゃないかと思います。
葛藤=対立、苦悩と言い換えると分かりやすくなるかもしれません。
例えば、
「悪いことができない主人公が歩いていると100万円の入った封筒が落ちていて、それを警察に届けた」
という話があったとします。
それは確かにいい話ですが、面白い話ではないですよね。
ですが、
「悪いことができない主人公が詐欺に遭って全財産を失ってしまう。息子の学費も払えず、嫁から離婚を言い渡される。そんな中歩いていると10万円の入った封筒が落ちている。悩んだ末にそれをポケットにしまう」
という話ならどうでしょう?
いい話ではないですが、面白い話ですよね。
ここには「悪いことをしてはいけない」と「この100万があれば息子の学費が払えて離婚を免れる」という対立した苦悩=葛藤があります。
葛藤は作品において観客の関心を得るためになくてはならない要素だということが少しは理解できたと思います。
あなたの書く主人公が何と対立し、何に苦悩しているのかもう一度確認してみましょう。
変化している
変化も主人公の条件で大切なことです。
葛藤についてでも話しましたが、「いい人がいいことをする」では観客の心を動かすことはできません。
- いい人が悪いことをしてしまう
- 悪い人がいいことをする
というように主人公の心や身体が動く=変化することで観客の心も動きます。
まとめると、あなたの書こうとしている作品の登場人物で「テーマを背負っていて、葛藤を抱えていて、作品の最初と最後で一番変化している人」は誰でしょうか?
その条件に合う人物があなたの物語の主人公です。
ステップ4:構成を立てる
ここまで来たら作品を作る大きな要素は出揃いました。
「そろそろ書いてもいいですかね……」
と思ったあなた。まだ書いてはいけません。
書くのは構成を考えてからにしてください。
構成の大切さは脚本に関する本を一冊でも読むと必ずと言っていいほど書かれていることです。
構成を料理で例えるなら調理法です。
どれだけいい食材でも、調理の仕方によって出来上がる料理のおいしさは全く違います。
脚本も、どれだけいいアイデアを持っていても、構成の立て方によって作品の面白さは10点にも120点にもなり得てしまいます。
「じゃあどうすれば上手く構成が作れるの?」
そう思ったあなたに、残念なお知らせです。
構成の立て方は人それぞれ違います。なので絶対的な構成術というものは存在しません。
とにかく試行錯誤して、書きながら自分なりの構成術を身につけていくしかないんです。
とはいえ、そう突き離れては初心者の方は何もできないと思うので、今回はオーソドックスな方法をわたしなりにお伝えしようと思います。
みなさんはこの方法を参考にして、自分なりの構成術を身につけてください。
ハコ書き(構成表)を作る
構成の考え方は、
- 大枠から考えて、だんだん細かくしていく
というのが基本です。
まずは起承転結を考えます。
考える順番としては、まず物語の入口と出口である「結と起」から出口までの道すじである「承と転」を考えていくとスムーズだと思います。
大まかな流れができたらハコ書き(=構成表)を作っていきます。
ハコとは「場所・人物・出来事」など簡潔に箇条書きしたものです。
参考までに私が『ローマの休日』の冒頭をハコに直したものを載せておきます。
『ローマの休日』構成表 ◯ ニュース映像 アン王女、ヨーロッパの親善旅行でロンドン、パリを訪問。 過密スケジュールの中、笑顔で公務に当たるアン王女。 ◯ ローマの舞踏会会場 大勢の招待客に挨拶するアン王女。 アン王女、ドレスの下に隠れて右の靴を脱ぎ、疲れた足をさする。 バランスを崩した拍子に靴を倒してしまう。 ◯ 大使館・王女の寝室(夜) 寝巻き姿、疲れた様子のアン王女。 城の外では音楽に合わせてダンスをする人々。 伯爵夫人に明日の過密スケジュールを説明される。 ヒステリーを起こすアン。医者が来て鎮痛剤を打たれる。 城を抜け出すアン。 ◯ とある部屋 ポーカーをする新聞記者のジョー、カメラマンのアービング、他数人の男。 明日、アン王女の記者会見が11時45分からある。 ○ 道 ジョー、鎮痛剤で寝ているアン王女を見つける。 ジョー、タクシー転手にアン王女を送り届けるように言うが断られる。 仕方なく自分の家へ連れて帰るジョー。
ハコ書きを作ることのメリットはストーリーを一目で客観的に把握できるという点です。
脚本だと読み返すのも一苦労ですし、客観的な目線で捉えることが難しいです。
でもハコ書きだと、
- 「なんかテーマがぶれてるな」
- 「主人公の感情の流れが変だな」
- 「承と転のエピソードが少なくてストーリーのバランスが悪いな」
ということが一目でわかります。
その都度全体を調整しながら少しずつ構成を固めていってください。
ステップ5:とにかく書いてひたすら書き直す
長かったですが、設計図の完成です! お疲れ様でした!
ここまで来てようやく作品を書けます。
ここまで準備ができていれば、途中で展開に詰まったり、最後まで書けなくなることは無くなります。
ただし、すんなりと作品が完成することはありません。
必ず書いていると、
- 「ここ気に入らないな」
- 「なんか矛盾してる、飛躍しすぎてるな」
- 「違った構成の方が良さそうだな」
と思うようにいかないことが出てきます。
その都度、
- 構成を見直す
- 主人公を見直す
- 調査し直す
- テーマを見直す
を行い、3歩進んで2歩下がりながら少しずつ完成に近づけていきましょう。
まとめ
ストーリーをつくるには書く前の準備が大事です。
- 伝えたいテーマを明確にしてそれについて調べる
- テーマを背負い、観客が感情移入しやすいような葛藤を抱え、作品を通して変化する主人公を設定する
- ハコ書きをつくって構成を立てる
- とにかく書いてはそれを直すことを繰り返す
ストーリーができたと思っても実際に書いてみるとその通りに行かないことがほどんどです。
ですが、そこで諦めてしまうのはもったいないです。
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