脚本におけるキャラクターは、作品の面白さを決める重要な要素ですが、作り方を知らない方は多いです。優れたキャラクターは物語に命を吹き込み、観客の心に深く刻まれます。この記事では、魅力的なキャラクターを生み出すための具体的な方法や重要性について詳しく解説します。
脚本家を目指す方はもちろん、小説家や漫画家、物語に関心のあるすべての方が参考になる内容です。本記事を読み、ぜひ自分の創作活動に役立ててください。
脚本におけるキャラクターの基礎知識

本書では脚本におけるキャラクターの基礎知識として、以下を解説します。
- 脚本におけるキャラクターの重要性
- 脚本におけるキャラクターの種類と役割
- 魅力的なキャラクターの特徴
»脚本の役割や目的を詳しく解説!
脚本におけるキャラクターの重要性
キャラクターとは単なる物語の登場人物ではありません。優れたキャラクターは物語を動かす原動力として機能します。キャラクターの持つ欲望や目標が行動を起こし、物語に展開を生み出すからです。主要キャラクターである主人公に強い葛藤や願望がなければ、物語は単なる出来事の羅列になってしまいます。
観客との感情的な結びつきを生むという意味でもキャラクターは重要です。観客は魅力的なキャラクターに共感し、感情移入します。感情的な結びつきによって観客は物語を追体験することで、心に響く作品になります。
キャラクターは作品の記憶に残る要素です。物語の細部は時間とともに薄れても、印象的なキャラクターは長く記憶に残り続けます。『ハムレット』のような古典作品が何世紀にもわたって読み継がれているのも、魅力的なキャラクターの力によるところが大きいと言えるでしょう。
キャラクターの種類と役割

物語に登場するキャラクターは、主に3つの種類に分類することが可能です。
- 主人公
- 敵役
- サポート役
主人公は物語の中心となる存在で、主人公の成長や変化が物語の核となります。観客は主人公を通じて物語を体験しながら物語世界を見ることになります。
敵役は主人公に対立し、障害をもたらす存在です。単なる「悪役」として描くのではなく、行動に説得力のある動機付けが必要になります。優れた敵役は、主人公と同じくらい魅力的なキャラクターとなる場合も多いです。
サポート役は、主人公を助けて物語に深みを与える存在です。主人公の特徴を引き立てたり、異なる視点を提供したりすることで、物語を豊かにします。キャラクター同士の関係性は、ドラマを生み出す重要な要素です。対立、友情、恋愛など、様々な関係性が物語に奥行きを与えるため、バランスの良い配役が需要になります。
魅力的なキャラクターの特徴
キャラクターの種類に関わらず、魅力的なキャラクターには共通する特徴があります。特徴を意識することで、より印象的なキャラクターを作ることが可能です。主な特徴として、以下の3つが挙げられます。
- 目標や動機が明確である
- 葛藤がある
- 人間らしさがある
明確な目標や動機は魅力的なキャラクターに欠かせない要素です。キャラクターが何を求めているのか、なぜその行動を取るのかが明確でなければなりません。「世界を救いたい」などの漠然とした目標ではなく、個人的な理由や切実な動機があると観客は共感しやすいです。
内的な葛藤があることも、魅力的なキャラクターの特徴です。理想と現実の狭間で苦悩したり、相反する価値観の間で揺れ動いたりする姿は、キャラクターに深みを与えます。明確な目標や動機を持ちながらも迷いや苦しみを抱えるキャラクターが、観客を応援したい気持ちにさせます。
どんなに非現実的な設定であっても、感情や反応に人間らしさがあれば、観客はキャラクターに感情移入できます。人間が誰しも抱える弱さや醜さなど、矛盾した感情を上手に描き出すことが重要です。
魅力的なキャラクターの作り方

本章では魅力的なキャラクターの作り方について解説します。具体的な手順は以下のとおりです。
- 背景を設定する
- 目的や葛藤を明確にする
- 長所と短所を設定する
- 特徴を設定する
背景を設定する
まず、キャラクターの背景を丁寧に設定しましょう。生い立ちや家族関係、重要な過去の出来事などを設定することで、キャラクターの行動や価値観にリアリティが生まれます。設定した背景すべてを作品内で明かす必要はありません。作者が把握しているだけでも、キャラクターのイメージが膨らみ、セリフや行動に説得力が生まれます。キャラクターの一貫性を保つのにも役立ちます。
目的や葛藤を明確にする

背景が固まったら、目的や葛藤を明確にしましょう。キャラクターが何を求め、何に悩んでいるのかを具体的に設定します。外的な目標(具体的に達成したいこと)と内的な目標(精神的な成長や克服したい課題)の両方を考えることが重要です。特に主人公の目的や葛藤は、作品のテーマやメッセージに関わるものでなければなりません。
長所と短所を設定する
完璧すぎるキャラクターや、欠点ばかりのキャラクターでは魅力に欠けます。キャラクターをより魅力的にするには、長所と短所をバランスよく設定することが大切です。欠点や弱点を設定することで、より人間らしく共感できるキャラクターになります。短所を設定する際は、後に克服する可能性を持つものや、場合によっては長所として機能するものだとより良いです。
特徴を設定する

キャラクターを観客に印象づけるには、個性的な特徴を持たせることも効果的です。独特の言い回しや口癖、話し方のクセなどを設定することで、キャラクターの個性が際立ちます。髪型やアイテムなど外見的な特徴も効果があります。
»観客を感動させるセリフの書き方を詳しく解説!
特徴を設定する際は、わざとらしくならないよう注意してください。登場人物の背景や葛藤、性格をきちんと設定できていると、キャラクターに合った特徴を設定できます。
キャラクターを作る際の注意点

本章ではキャラクターを作る際の注意点について解説します。主な注意点は以下のとおりです。
- ステレオタイプを避ける
- 一貫性を保つ
ステレオタイプを避ける
ステレオタイプのキャラクター作りは、物語を単調で予測できるものにする原因になります。キャラクターに独自の背景や価値観、矛盾や欠点を持たせることが大切です。表向きは厳格な教師のキャラクターでも密かにアイドルの大ファンであるなど、意外性のある要素を組み込むと立体的な人物像を構築できます。
ただし、既存の型を完全に無視する必要はありません。型をベースにしながらもちょっとしたひねりを加えることで、観客に受け入れられながらも新鮮なキャラクターが生まれます。
一貫性を保つ
キャラクターの一貫性は作品においてとても重要です。何の脈絡のもなく性格や行動パターンが突然変わってしまうと、キャラクターの信頼性が損なわれます。ストーリー展開の都合などでキャラクターに合わない言動を取らせることは避けましょう。キャラクターの成長や変化を描く際は、感情の流れや成長の過程を丁寧に描く必要があります。
脚本のキャラクターに関するよくある質問

脚本のキャラクターに関する質問を以下にまとめました。
- キャラクターの作り方に関するおすすめの本は?
- キャラクターの作り方が上手くなる方法は?
- キャラクターはストーリーを考える前に作るべき?
キャラクターの作り方に関するおすすめの本は?
キャラクターの作り方の参考になる書籍を厳選して2冊紹介します。
本書には、キャラクターのタイプを4つに分類してキャラ設定を行う方法が紹介されています。付属するワークシートに沿って進めていくと魅力的なキャラクターが作れるのも魅力です。バッグストーリーや人間関係、セリフなどさまざまな視点からキャラ作りに言及しており、この記事の内容をより深く知りたい方におすすめの一冊です。
本書には『最高の離婚』や『カルテット』など個性的なキャラが登場する作品を生み出す坂元裕二さんの半生や豪華対談、インタビューが掲載されています。本書の目玉は、初公開となるドラマの企画段階の資料や、第1回フジテレビヤングシナリオ大賞受賞作品が収録されていることです。
坂元裕二さんは脚本の企画書やストーリーは書かず、登場人物の過去を掘り下げた履歴書を用意してから執筆を始めるそうです。制作の裏側を知りたい方やより実践的な方法を学びたい方におすすめできます。
»脚本の勉強に役立つ本を厳選して紹介!
キャラクターの作り方が上手くなる方法は?

キャラクターの作り方が上手くなるには、より多くの作品を分析したうえで実際に書いてみることが重要です。好きな作品のキャラクターがなぜ魅力的なのか、どのように描かれているのかを分析してみましょう。作品を分析する際は単なる感想にとどまらず、技術的な観点から分析することが大切です。
分析する主なポイントは以下のとおりです。
- キャラクターの目標設定
- 葛藤の描き方
- セリフの特徴
上記のポイントがストーリーとどう関係しているかを細かく観察すると、キャラクター作りの解像度が上がります。分析するだけでなく、実際に書いてみることも重要です。学んだ理論を実践しながら経験を積むことで、キャラクター作りの感覚が養われていきます。
»脚本の分析方法を詳しく解説!
最初は完璧を目指さず、まずは書いてみることから始めましょう。書いたものを他人に読んでもらい、フィードバックを得ることも上達の近道です。
キャラ設定はストーリーを作る前に考えるべき?
キャラクターとストーリーのどちらを先に考えるかについては、人によって意見が分かれます。キャラクター先行で創作を始める場合、キャラクターの特性や関係性から自然にストーリーが展開しやすいです。キャラクターの性格や目標が明確になっていれば、展開される物語に説得力が生まれやすくなります。
ストーリー先行は、物語の展開に必要なキャラクターを効率的に設定できるのがメリットです。三幕構成などの理論を基に全体の構造を先に決めることで、破綻の少ない物語を作りやすくなります。創作する際は、どちらかに限定するのではなく、キャラクターとストーリーを同時並行で創作するのが現実的です。相互作用が生まれ、より魅力的な作品が生まれます。
»三幕構成の基本やストーリーの作り方を詳しく解説!
»脚本のプロットの書き方を詳しく解説!
まとめ

この記事では、脚本における魅力的なキャラクター作りの重要性や具体的な方法を解説しました。キャラクターは物語を動かす原動力で、観客との感情的な結びつきを生む重要な要素として位置づけられています。主人公や敵役、サポート役など、それぞれが物語において重要な役割を担っています。
魅力的なキャラクターの特徴は以下の3つです。
- 明確な目標や動機がある
- 内的な葛藤がある
- 人間らしさがある
具体的な作り方の手順は以下のとおりです。
- 背景を設定する
- 目的や葛藤を明確にする
- 長所と短所を設定する
- 特徴を設定する
キャラクター作る際はステレオタイプを避け、一貫性を保つことに注意してください。キャラクター作りを上達させるには、多くの作品分析と実践が重要です。キャラクターとストーリーを同時並行で創作することで、より完成度の高い作品に仕上がります。初心者は完璧を目指さず、まずは書いてみることから始め、フィードバックを得ながら改善していくことがおすすめです。
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