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【脚本家の必読書】ブレイク・スナイダー著『SAVE THE CATの法則』を要約・解説

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みなさんこんにちは、ムービー3分クッキングの時間です。

今回は脚本を目指す方なら誰もが知っているであろうブレイク・スナイダー著『SAVE THE CATの法則』を紹介します。

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こんな人に読んでほしい
  • 本書を買おうか迷っている
  • 内容をざっくりと知りたい

今回はそんな方に向けた記事になっています。今回は本書の中でも

  1. 最高のログラインを作る
  2. 自分の作品をジャンル分けする
  3. 魅力的な主人公を作る

の3つに絞ってお届けします。それでは参りましょう!

最高のログラインを作る

突然ですがイメージしてみてください。

みなさんの書いた作品を友人、もしくは脚本の先生、さらにはプロデューサーに読んでもらうときのことを。

イメージしにくい方は自分が大好きな作品を友人に紹介するときのことでも構いません。

相手はあなたにこう問いかけるでしょう。

「で、どんな話なの?」

あなたの書こうとしている/書いているものはどんな作品なのか?

この答えを聞いた相手に関心を持ってもらえなければ、あなたの作品は読んでもらうことすらできないかもしれません。

作品を一行で簡潔に言い表したもの、これをログラインと言います。

脚本家は最高の脚本を書くこと以前に、最高のログラインを作ることから勝負が始まっているのです。

 著者は最高のログラインとは

  •  皮肉があるもの
  •  イメージが広がるもの

 と定義しています。詳しくみていきましょう。

皮肉がある

いいログラインには皮肉があります。

例えば『ダイ・ハード』のログラインは「警官が別居中の妻に会いにくるが、妻の勤める会社のビルがテロリストに乗っ取られる」。

『ジュラシック・パーク』は「遺伝子技術で蘇った恐竜のテーマパークに遊びにきた人々が、檻から逃げ出した恐竜から必死に逃げる」。

ウソがつけない正直な人間が、騙し合いのゲームに参加することになる」は『ライアーゲーム』のログラインです。

このように皮肉はストーリーのつかみとして観客の関心を引きます。

あなたの作品のログラインに皮肉は含まれているでしょうか?

イメージが広がる

社会現象にまでなったドラマ『愛の不時着』のログラインは「パラグライダーの事故で北朝鮮に不時着した韓国の財閥令嬢が、北朝鮮の軍人と恋に落ちる」です。

この一行だけで、国際的な問題や国境によって引き裂かれる愛、それをどうやって乗り越えるのかなど、さまざまなイメージが湧きます。

いいログラインとは読み手の関心を引くだけでなく、ストーリー展開、登場人物の葛藤をイメージさせることができます。

ログラインとは本の表紙のようなものです。表紙がよければ中身を読んでもらうことができます。自分の作ったログラインに上記のものは表れているでしょうか?

もし表れていない場合はログラインが間違っているか、ストーリー自体に問題があるかもしれません。

そこで次では、みなさんに最高のログラインを作るための練習法を3つご紹介します。

最高のログラインを作るための練習法

最高のログラインを作るには、

  1. ネット記事などの作品紹介を読んでみる
  2. 映画を友人に売り込んでみる
  3. 自分の作品のログラインを書いてみる

の3つが有効です。順に解説していきます。

ネット記事などの作品紹介を読んでみる

 ネット記事や雑誌などの作品紹介欄にあるログラインを読んでみましょう。

  • どんなログラインがあなたの関心を引くか
  • そのログラインは「どんな映画か」を的確に表しているか 
  • ログラインが曖昧だと作品もイマイチな気がしないか

まずはたくさんのログラインを読み、良いものと悪いものの感覚をつかんでいきましょう。

映画を友人に売り込んでみる

今月公開される映画を友人に売り込んでみましょう。宣伝に使われているログラインや予告などを見て、さらに上手く書き換えられないかやってみましょう。もしくは自分の好きな作品でもいいです。ログラインを作る作業は作品をきちんと把握する能力を鍛えることにもなります。

自分の作品のログラインを書いてみる

今あなたが書いている脚本や、以前書いたのもがある場合はログラインを書いて他の人に話してみましょう。相手に関心を持ってもらえなかったり、主人公やストーリー展開についてさまざまな質問が来たり、話しているうちにログラインが変化したり脚本に書き直した方がいい部分が見つかったりすると思います。このように何度も修正を重ねてより良い作品に近づけていきましょう。

自分の作品をジャンル分けする

自分のアイデアを人に伝え、試行錯誤を繰り返した結果、あなたは最高のログラインを手に入れました。

「よし、脚本書くぞ!」

とその前に、もうひとつ質問に答えてほしいんです。「どんな話なの?」の次に来る質問。それは、

「どんなジャンルなの?」

です。最高のログラインを手に入れたあなたは、

「自分の作品はどのジャンルにも当てはまらない、斬新なものなんだ!」

と反論したくなるでしょう。気持ちはわかります。

しかし数ある作品の中で完全に独立していて、どれとも似ていない作品は存在しません。仮に存在したとして、その作品は誰にも相手にされない作品になるでしょう。

さらに自分の作品のジャンルを知ることは、書いている途中で道に迷ったときに役に立ちます。同じジャンルの作品を参考にすることでプロットや登場人物のヒントをもらうことができます。

物語のジャンル10選

自分のジャンルがどれに属するかわからないという方のために、著者が分類した10のジャンルを紹介します。

このジャンル分けはコメディ、ラブストーリー、ホラー、伝記などいわゆる普通のジャンルではなく、ストーリーの本質を踏まえた分類になっています。

物語のジャンル10選
  1. 家の中のモンスター
  2. 金の羊毛
  3. 魔法のランプ
  4. 難題に直面した平凡な奴
  5. 人生の節目
  6. バディとの友情
  7. なぜやったのか?
  8. バカの勝利
  9. 組織の中で
  10. スーパーヒーロー

それぞれ簡単に解説していきます。

家の中のモンスター

『ジョーズ』『エクソシスト』『エイリアン』などがこれに属します。古くからあるストーリーの形です。

基本ルールは逃げ場のない空間(=家)に犯罪や事件が起こります。その事件は大抵場合人間の欲が招いたものです。その結果、モンスターが生まれます。モンスターは罪を犯した者に復讐しようとし、罪に気づいた人間は多めに見ますが、それ以外の人間はとにかく逃げ回り、隠れます。

このモンスターにどんな新鮮味を加えられるかが脚本家の見せ所です。日本映画の『ゴジラ』などもこのジャンルに入るでしょう。

金の羊毛

金の羊毛とはギリシャ神話の英雄イアソンとアルゴ戦隊員の話に由来していて、あるものを求めて旅に出た主人公が、最終的に別のもの(=自分自身)を発見するというジャンルです。

『オズの魔法使い』『スター・ウォーズ』『バック・トゥ・ザ・フューチャー』など、一見別のものに見えますが、どれもこのストーリー形式をとっています。

このジャンルで欠かせないのは、主人公が旅の途中で人々と出会い、いろいろな経験をするということです。それらによって主人公がどう変化するのか、これを描くのが脚本家の仕事です。

魔法のランプ

「○○になりたい」「○○がほしい」といった人間の願いがある日突然叶うというジャンルです。人間は皆何かしらの願望を持っていますから、この手のストーリーは受け入れやすい性質を持っています。

基本ルールは、主人公がシンデレラのようにひどい扱いを受けていることが多いです。だからこそ観客は主人公の願いが叶ってほしいと願うのです。しかしどんな主人公でも成功し続けるばかりでは鼻についてきます。だから主人公は最終的にどんな魔法よりも観客と同じ人間でいることが一番だと気づくようになっています。

このジャンルでは「一番大切なのは道徳に適った行いをすること」という教訓が用意されているのです。

難題に直面した平凡な奴

このジャンルの定義は「どこにでもいそう奴が、とんでもない状況に巻き込まれる」というものです。この手のストーリーは観客にも起こりうる出来事だと思わせることで関心を引くことができます。

『ダイ・ハード』『シンドラーのリスト』『タイタニック』など多くの名作がこのパターンに当てはまります。

基本ルールは主人公が観客と同じ普通の人間であること。そしてそんな普通の人間が勇気を振り絞って解決しなければならない問題に立ち向かうことです。主人公が平凡なほど問題は大きく見え、悪者が悪いほど主人公の行動が勇気あるものに見えます。

人生の節目

人は生きていると様々な節目を迎えます。思春期、失恋、結婚、出産、老い、死……これらを扱うストーリーにはシリアスなものにせよコメディにせよ、基本的に変化を描いたものになっています。

基本ルールは、常にベストな選択をして人生を送る主人公のもとへ、理解し難い〈モンスター〉が襲ってくる。主人公は辛い目に遭うが、人生というものを受け入れることによって解決策を見出し、最後は勝利を収めるというものです。

バディとの友情

いわゆる「バディもの」と呼ばれるジャンルです。

基本ルールは最初バディはお互いの存在を嫌っているが、次第に相手の存在が必要になってくる。やがて別れが訪れるが、これは本当の別れではなく、互いの気持ちを最終確認するためのきっかけにすぎない。そして二人揃って初めて一つの存在であることに気づきます。

実はこの「バディもの」は仮面を剥がせばラブストーリーも同じ形なんです。逆に言えば、ラブストーリーはセックスの可能性がプラスされた「バディもの」と言うことができます。

なぜやったのか?

いわゆる「探偵もの」と呼ばれるジャンルです。

このジャンルは主人公の変化を描くものではなく、犯罪が事件として明るみに出たときに、その背後にある想像しなかったような人間の邪悪な性が暴かれる様を描きます。

名作で脚本のお手本としても名高い『チャイナタウン』をはじめ、多くの探偵ものや社会派ドラマが存在します。それらに共通するのは、探偵が観客の代わりに謎を解くかに見えて、観客が探偵の集めた情報をもとに真相を明らかにし、その意外な結末に衝撃を受けるという作りになっていることです。

この手の推理ものを書きたければ、このジャンルの名作を色々見て、探偵がどういう風に観客の代わりをしているのか観察してみましょう。

バカの勝利

神話でも伝説でもバカは重要な人物です。一見負け犬に見え、みんなから見下されがちな「バカ」は、逆にそのおかげで最終的に光り輝く勝利を手に入れます。

基本ルールは「バカ」に対してより大きな権力の悪者が存在すること(大抵は体制側)。バカは悪者に臆することなくコテンパンに批判します。いわゆる社会のアウトサイダーが勝利する姿は、観客も自分が勝利した快感を味わうことができます。

チャップリンの映画や『フォレスト・ガンプ/一期一会』などがこのジャンルに属します。

組織のなかで

『カッコーの巣の中で』『ゴッド・ファーザー』など集団や組織、施設、家族についてのストーリーを扱うジャンルです。組織は多数派の目的を叶えるために少数派が犠牲になることもあります。

このジャンルの主人公は新しく組織に入ってきた人物(新人)の視点から語られることが多いです。主人公は組織に誇りを感じる一方で、組織の一員として生きるために自分のアイデンティティーを失うという問題を抱えています。

要するにこの手のストーリーは、「俺とあいつらのどっちがイカれているか」という問いに集約されます。様々な組織に属している我々にとって、主人公の行動は我々自身の行いを映しているようなものなのです。

スーパーヒーロー

このジャンルは「難題に直面した平凡な奴」の対極にあります。超人的な主人公がありきたりで平凡な状況に置かれます。問題が起きるのはヒーロー本人のせいではなく、周囲の人間たちの醜さのせいであり、それゆえヒーローは周囲の人間から理解されません。ヒーローにとって特別な存在でいることはつらいことです。

スーパーヒーローの物語は人と違うとはどんなことか、人より優れたものを持つ者を妬む凡人と向き合わなければならないとはどういうことかを描きます。日頃の生活でも私たちは誤解されたり、理解されない経験をしています。このジャンルが支持されるのは、観客がヒーローの超人的な能力に想像力を掻き立てられながらも、ヒーローの抱えるつらさや苦しみに共感するという絶妙なバランスが取れているからです。

みなさんの書こうとしている作品に似たジャンルは見つかったでしょうか?

こういったひな形は便利で役に立ちます。お決まりのパターンを使いたくなる理由と利点をきちんと理解しておきましょう。パターンやルールが生まれるのには、それ相応の理由があるのです。ルールを打ち破りたければ、まずはそれらを理解する必要があります。理解して初めて、本物の創造性を発揮できるのですから。

魅力的な主人公を作る

これまでみなさんには「どんな話なの?」「どんなジャンルなの?」と二つの質問に答えてもらいました。

次にする質問が、脚本を書く前にする最後の質問です。

「誰についての話なの?」

です。作品には主人公がつきものです。魅力的な主人公を設定できるかが、作品の良し悪しを決めるといっても過言ではありません。

では、どうすれば魅力的な主人公を作ることができるのでしょうか?

著者は主人公に必要な要素を

  1.  共感できる
  2.  学ぶことがある
  3.  応援したくなる
  4.  最後に勝つ価値がある
  5.  原始的でシンプルな動機がある

と定義しました。その中でも原始的でシンプルな動機が最も大事だと言います。

魅力的な主人公には原始的でシンプルな動機がある

人間は本能的で原始的なものに心を動かされます。生き延びること、飢えに打ち勝つこと、愛するものを守ること、死の恐怖に打ち勝つこと。こうした根本的な欲求は万人が持っており、多くの人の心をつかむことができます。これさえ押さえていれば、共感も、学びも、応援も、勝つ価値もクリアできるのです。

魅力的な主人公を作るための必殺技  

最後に魅力的な主人公を作るための必殺技を著者は教えてくれています。

それは本書のタイトルになっている「SAVE THE CATの法則」を使うことです。

SAVE THE CATの法則とは、作品の冒頭で主人公が危機一髪のところで猫を救うような行動をとることで、観客は主人公に共感し好きになってしまうという法則です。

この法則のすごいところは、一見好かれそうにない主人公にも使うことができる点にあります。

『アラジン』の冒頭、お腹を空かせたアラジンは食べ物を盗みます。宮廷の護衛に追われながら街中を逃げ回ったアラジンはようやく追っ手を巻き、盗んだパンを食べようとします。ところが目の前に同じくお腹を空かせた子供たちがいます。するとアラジンはパンを彼らにあげます。この瞬間、観客の心はアラジンと一緒になるのです。

なんとなくイメージできたのではないでしょうか?

無闇に猫を助けたり、老人を介抱するシーンを入れろというのではなく、肝心なのは観客が主人公やストーリーに共感できるように配慮することだと覚えておいてください。

最後に

いかがでしたか?

本書は三冊刊行されているシド・フィールドの脚本術の要点と、『感情から書く脚本術』の内容を初心者向けにまとめたような内容と言えます。

今回は脚本を書く前の段階を中心に解説しました。まだまだ紹介しきれない部分も多くあるので、気になった方はぜひ本書を手に取ってみてください。

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脚本の書き方についての本をどれか一冊だけ買いたいなら、幅広い内容をコンパクトにまとめている本書をおすすめします。より深掘りして学びたいと思ったら他の本を手に取ってみるのが良いと思います。

シド・フィールドの脚本術と『感情から書く脚本術』についても紹介していますので、よろしければご覧ください。

『映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術』を要約・解説

『素晴らしい脚本を書くためにあなたに必要なワークブック シド・フィールドの脚本術』を要約・解説

【必読】『「感情」から書く脚本術』をわかりやすく要約・解説

最後までお付き合いいただきありがとうございました!

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