シナリオ作品を分析する方法は？【『ローマの休日』の実例をもとにわかりやすく解説】

「シナリオ分析って具体的どうやればいいの？」

多くの人に評価されている既存の作品を分析することは、シナリオを上達させるために欠かせません。

しかし具体的にどのように分析したらいいのか、初心者の方はわからないと思います。

今回はそんな方に向けてシナリオの分析方法について、私が『ローマの休日』で行った実際の作品分析をもとにしてわかりやすく解説します。

シナリオの分析方法を解説した本やサイトはいくつもありますが、実例を出して詳しく紹介しているものは当サイトだけだと思います。

最後まで読めばどんな作品も分析できるようになり、自作のシナリオにも応用できるスキルを身につけることができます。

また後半ではシナリオ分析に必要な動画配信サービスについて、どのサービスがどんな人に適しているのかを詳しく解説していきますので、ぜひ最後までお付き合いください。

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シナリオ作品分析の重要性

まず初めにシナリオ作品を分析する重要性について解説します。

結論からお伝えすると、シナリオ作品を分析することで脚本家になるために必要な客観力、ストーリーの型、アイデアの引き出しを得ることができるからです。

以下でそれぞれ詳しく解説します。

客観力が身につく

プロの脚本家としてやっていくには、自分の作品を俯瞰的に捉え、「観客が観て面白いと感じるか」「どこをどう改善すればもっと面白くなるのか」を常に考える力（＝客観力）が必要になります。

とはいえ、自分の作品を俯瞰的に捉えることは特に初心者のうちは難しく、プロでも至難の業です。

しかし自分の作品でなく他の人の作品であれば、作品との距離が離れているぶん客観的に捉えることができます。

まずは他人の作品分析で作品を客観視する力を身につけていくうちに、次第に自分の作品も客観的な目線で捉えられるようになっていきます。

シナリオの型が身につく

既存の映像化作品はプロの脚本家が多大な労力を使い、何度も書き直して完成させたシナリオの完成形です。

それはある意味でシナリオの正解と言うことができ、好みに関わらずそこから学ぶことは数多くあります。

多くの人に受け入れられる作品には、テーマやジャンルによって、共通する物語の構造や展開、キャラクター設定が存在します。

作品分析によってこういったシナリオの型を身につけ、共通点や差異を把握することで、プロの脚本家になるために必要なシナリオの知識やスキルを得ることができます。

アイデアの引き出しが増える

プロの脚本家になれば必ずしも自分の書きたいテーマやジャンルだけ書けるとは限りません。

さらには監督やプロデューサーの意見や注文を柔軟に取り入れ、脚本を書き直すスキルが必要になります。

そんな時のために日頃から幅広い作品を分析して引き出しを多く持っておくと、いざという時に役に立ち、脚本家としてより長く活動できる土台になるでしょう。

分析する作品の選び方

次に、分析する作品の選び方を解説します。

ただ適当に作品を選ぶのではなく、それぞれの目的に合った選び方をすることで、より効果的にシナリオについての理解を深めることができます。

自分の好きな作品を選ぶ

自分の好きな作品であれば、より分析に集中しやすくなります。

またストーリーがすでに頭に入っているので、より精度の高い分析が可能になります。

人気や話題の作品を選ぶ

人気のある作品や話題になっている作品は、多くの人々によって評価されている作品と言えます。

自分の好みに関わらず、プロを目指すのであれば最も分析に適しているでしょう。

「この作品のどこが評価されているのか」「どんなところが観客を魅了しているのか」を考えることはプロになるための近道なります。

また、人気なのに自分は面白くないと感じたときに「どこが面白くないと感じたのか」「自分ならどうするか」を考えることも、自分の書きたいものを明確にする上で大切な作業です。

自分が書きたいジャンルの作品を選ぶ

今自分が書きたいテーマやジャンルを選ぶことで、その分野特有のストーリー展開や設定を学ぶことができ、それを自分の作品に活かすことができます。

アウトプット前提での分析ができるため、より高い意識で作品分析に取り組むことができます。

同ジャンルの作品を複数選ぶ

目的に合わせて選ぶ作品を決めたら、ひとつではなく同じジャンルのものを複数選びましょう。

そうすることで分析結果を比較することができ、パターンなどの普遍的な傾向やその作品のオリジナリティがより明確にわかります。

シナリオ作品分析の方法【具体と抽象を行き来する】

それでは具体的にシナリオを分析する方法について解説します。

手順としては、

の4ステップになります。

これからそれぞれについて詳しく解説していきますが、分析をするときみなさんに意識して欲しいことがあります。

それは、分析は具体↔抽象で行うということです。

これはシナリオだけでなく、様々な事象を分析する際に応用できる方法です。

まずは目の前の具体をよく観察し、抽象化することで本質をつかむ。

次にもう一度具体を見直すことで、最初よりも深く具体を理解することができるようになっています。

この具体を観察する作業がステップ１、抽象化する作業が２と３、再度具体を観察する作業が４に当てはまります。

また、抽象化によってつかんだ本質は自分の作品づくり（具体化）として応用することもできます。

この具体↔抽象の考え方はクリエイティブな作業においてとても重要なので、この機会にぜひ覚えてください。

構成表を作る

作品を分析するにあたって、まずは映像をもとに構成表を作成します。

構成表とは作品の設計図のようなもので、これを作ることで作品を俯瞰して捉えられ、客観的な目線で分析を行うことができます。

場所・登場人物・出来事をシーンごとに簡潔に書いていきます。

以下が私の作った『ローマの休日』の構成表ですので、参考にしてみてください。

【例】『ローマの休日』構成表

ストーリーの流れをつかむ

構成表が完成したら、それを眺めながらストーリーの流れを理解します。

これらを確認することで、ストーリーの流れを理解することができます。

最初は難しく感じるかもしれませんが、数をこなしていくうちにパターンが身についてくるのですんなりわかるようになります。

私の行なった『ローマの休日』分析で当てはめてみると、

例『ローマの休日』ストーリー分析

こういった感じになります。

この作業に正解というものはありませんし、これらの項目がきれいに当てはまらない作品もあります。

あくまで大切なのはストーリーの流れを理解することです。

もし上手くいかなくても、おおまかにストーリーがつかめたと感じたら、ひとまず次の作業に進んでみるのもいいかもしれません。

ストーリーの本質を捉える

次はストーリーの本質を捉える（抽象化）作業です。

具体的には、

を行います。

これらをすることで作品において最も大切な、ストーリーの核（テーマ・メッセージ）を見つけることができます。

私が『ローマの休日』で行なった例を参考にしてみて下さい。

『ローマの休日』ストーリーポイント箇条書き

こうしてストーリーを箇条書きしてみると、面白くない映画は無駄なシーンが多く、箇条書きが極端に少なくなるのですが、ローマの休日は削る箇所がないほど重要な部分ばかりで、名作である所以がよくわかりました。

『ローマの休日』のログライン

ストーリーをひと言で言い表すのは簡単に見えますが、ストーリーの本質を捉えていないとできない難しい作業です。

うまくできない場合は、ストーリーの箇条書きを15→10→5→3項目と少しずつ減らしていくと上手くいきやすいです。

具体的に検討する

ストーリーの本質がつかめたら、それぞれのシーン、人物、セリフについて、具体的に細かく検討していきます。

実例として『ローマの休日』でいくつか検討してみましょう。

主人公はジョーなのか？

『ローマの休日』をご覧になった方で、

「主人公はジョーではなくアンじゃないのか」

「アンとジョーのラブストーリーだから主人公はふたりだ」

と思った方もいるのではないかと思います。

主人公とは一般的に、そのストーリーの中で最も葛藤を抱えている人物、ストーリーの最初と最後で最も変化している人物のことを指します。

その視点で見ると、最初は金儲けのためにアンと接していたのに、次第に彼女を好きになり、身分を偽り彼女を陥れようとしている葛藤を抱えながら、最後は身を挺して彼女を守ったジョーが主人公として相応しいと考えました。

とはいえ、アンにも王女であることの様々な苦悩が描かれており、彼女に感情移入する観客も多いと思います。

また、身分の違う二人の主人公が出会い、惹かれ合い、別れていくストーリーとする見方も決して間違いではありません。

このように、ローマの休日はさまざまな視点で鑑賞することができる作品であり、それが魅力の一つと言うことができるでしょう。

また、どのように見るかによって、転換点（ミッドポイント）や三幕構成の捉え方が変化するのもシナリオの面白いところです。

真実の口のシーンの妙

ジョーが真実の口に手を食いちぎられたふりをしてアンを驚かすシーンは、作品を見たことがない人でも知っているほど有名です。

ただ作品を観ているだけだとジョーがアンを驚かすためにやったシーンだと思いがちですが、シナリオを分析的に見ると他のことが見えてきます。

このシーンは2人の葛藤を上手く利用したシーンだと思います。

アンとジョーは互いに身分を偽っていました。そんな2人が「嘘つきは手を食いちぎられる」という真実の口に手を入れることにこのシーンの面白さがあります。

「迷信だとわかっているけど、嘘をついているからもしかして……」「嘘がバレてしまうのでは……」そういった気持ちは手を入れる本人だけでなく、観客にも伝わります。

なのでジョーの手がなくなったとき、アンだけではなく観客も一瞬驚いてしまうのです。

このシーンは2人の設定をうまく活かした名シーンだといえます。

ラストシーンの名セリフ

記者会見場でアンとジョーは王女と新聞記者として対面し、アンはそこで初めてジョーが新聞記者だったと知るのです。

ある新聞記者が国家間の友好関係の見通しについて尋ねます。その後のやりとりです。

アン「（国家間の友好関係は）守られると信じています。人と人との関係が守られるのと同様に」

ジョー「わが通信社の見解を述べさせていただきますと、王女様の信頼は裏切られないでしょう」

アン「それを聞いて安心しました」

記者「最も気に入った訪問地はどこですか？」

　　アン、言葉に詰まる。

将軍「（アンに小声で）それぞれ……」

アン「それぞれ忘れがたい思い出があります。とてもひとつには……ローマです、なんといってもローマ。ローマの思い出は一生忘れられないでしょう」

この2人のやりとりには「ローマでのことは2人の秘密にしてほしい」「決して世間に後悔しないから安心して」という意味が込められています。

そして、王女として生きる決意をしたアンが王女としての模範的な回答ではなく「ローマの思い出（ジョーとの思い出）は一生忘れない」と言い切るセリフも、アンの気持ちを上手く表した名セリフだと思います。

『愛の不時着』との共通項

堅苦しい生活から解き放たれたアンが、庶民の生活に困惑しながらも満喫する様子は、現代の名作『愛の不時着』におけるユンセリの北朝鮮での生活を思い起こさせました。

『愛の不時着』は「争う国どうしのラブストーリー」であり、設定は『ロミオとジュリエット』に似ていますが、「身分の違うものどうし」という点ではそれぞれ共通しています。

そう考えると『愛の不時着』は『ロミオとジュリエット』と『ローマの休日』のいいとこ取りのハイブリット作品であり、「アン王女を主人公にした現代版ロミオとジュリエット」だと言えます。

作品分析におすすめの動画配信サービス

以上でシナリオ分析に関する解説は終わりです。

作品分析は他人のものを見るだけでなく、自分で数をこなしていくことで上達していきます。

これからたくさんの作品分析を行うにあたって、わざわざ映画館に行ったり、DVDをレンタルしたりするのでは時間やお金のコストが多くかかってしまいます。

そこで便利なのが、動画配信サービスを利用するということです。

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まとめ

お疲れさまでした。最後にまとめです。

長い記事になりましたが、最後までお付き合いありがとうございました。

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