「シナリオの書式や形式が知りたい」
「簡単にシナリオが書けるテンプレートが欲しい」
そんな方のために、コンクールに応募する際などのシナリオの書式や形式をどこよりもわかりやすく解説します。
さらに、設定要らずで簡単にシナリオを書くことができる「脚本テンプレート」も無料で配布しますので、最後までご覧ください。
ストーリー作りに関する書き方を知りたいという方はこちら↓
はじめに:シナリオが読みづらい理由
シナリオを読んだことがある人なら、一度は感じたことがあるはずです。
「何これ、読みづらいんだけど」と。
しかし、シナリオがそういった形式を採るのにはきちんとした理由があります。
それは、シナリオは製作陣のために書かれるものだからです。
「シナリオって読む人を楽しませるために書くものじゃないの?」
たしかに、シナリオの最終目的は観客を楽しませることにあります。
しかし小説のように文字がそのまま観客に届くわけではなく、シナリオをもとに製作陣が映像化したものが観客に届きます。
よく「シナリオは設計図である」と言われるように、
- 場所はどこか
- 時間帯はいつか
- 何が必要か
- 誰がどう動き、何を話すのか
各スタッフや俳優が仕事をしやすいように書かれたものがシナリオなのです。
これからシナリオの書き方を学んでいく上で、まずはそのことを意識するようにしてください。
シナリオの役割や目的について詳しく知りたい方はこちら↓
シナリオの書式
シナリオの書式は20字×20行が一般的です。
400字詰め原稿用紙(20×20)1枚分が、映像にして1分になると計算します。
60枚なら60分、120枚なら120分とページ数で作品の長さを判断しやすくなるため、この書式が採用されていると言われています。
ページ番号も忘れずに挿入するようにしましょう。
自分の好きな書式で書いていると、いざコンクールに出そうとするときに長すぎたり短すぎたりすることがあります。
普段からこの書式を使って、慣れておきましょう。
シナリオの形式
シナリオをコンクールに応募する際は「タイトル」「登場人物表」「あらすじ」「本文」が必要になります。
それぞれ以下で詳しく解説していきます。
タイトル
表紙の中央にタイトル、その横に作者名を書きます。
表紙は作品の顔です。くれぐれもタイトルに誤字や脱字がないようにしましょう。
登場人物表
名前・年齢・何をしているか(職業など)を書きます。
順番は、主役・脇役・端役と作品に重要な人物から書いていきます。
セリフが一言でもある人物は表に入れるようにしましょう。
登場人物表があると、シナリオを映像化する際にとても便利です。
人物表があると登場人物の数がすぐ把握でき、氏名、年齢、職業がわかることでキャスティングもしやすくなります。
あらすじ
ほとんどのコンクールではあらすじが必須になります。
字数は800字程度が一般的です。
あらすじは起承転結をしっかり書きます。
よく作品紹介であるような「一体どうなってしまうのか……」「予想外の展開が彼らを待ち受ける」的な含みを持たせたあらすじの書き方はNGです。
あらすじはそれ自体が独立した読み物として楽しめるように書いてください。
初心者の方はあらすじを軽く扱いがちですが、あらすじを書くことはとても難しいです。
なぜなら、作品の最も伝えたいエッセンスを凝縮して伝える技術が求められるからです。
「この作品で一番伝えたいことは何か?」「作品をひとことで表すとどんな話か?」
これに答えられなければ、いいあらすじを書くことはできません。
あらすじは最初に書くのではなく、シナリオを書き終えてから取り掛かるといいでしょう。
作品のエッセンスをつかむ技術が知りたい方はこちら↓
本文
シナリオは柱・ト書き・セリフの3要素で構成されています。
柱は場所や時制を指定します。
ト書きはその場所の舞台装置や小道具の使用、人物の動きを描写します。
セリフは登場人物のやり取りを表します。
それぞれ詳しく解説してきます。
柱
柱は文頭に「○」を置き、“○桃井家”と表記します。
なぜ「・」や「#」ではなく「○」なのかというと、撮影の際に○の中にシーン番号を書くためだと言われています。
シーン番号を書きながら脚本を書くと、シーンを入れ替えるときや、シーンを足したり減らしたりするときに番号を変えなくてはなりません。
なのでシナリオを書くときは「○」で大丈夫です。
もしシーン番号が必要なコンクールに応募する場合は、シナリオが完成してから番号を振るようにしましょう。
場所は“○桃井家・外観”というように、「・(なかぐろ)」を用いてより具体的に表すことができます。
さらに、前と同じ場所が連続する場合は「○同」と省略することもできます。
時間帯や時制を表したい場合は、柱の最後に()で指定します。時間帯の表記がない場合は昼を意味します。
次の柱を書くときは1行空けます。
柱を書くコツは「カメラを置く場所はどこか?」を意識することです。
例えば、花子が仕事に行く一郎を見送るシーンを書きたいとします。
“○桃井家・玄関”という柱を書くと、見送りに来る花子と家を出ていく一郎の画がイメージできます。
それに対して“○桃井家・前”という柱だと、家から出てくる一郎と、外へ出て一郎を見送る花子の画がイメージできます。
このように、同じシーンでも柱の書き方しだいでさまざまなニュアンスを表現することができます。
ト書き
ト書きは3文字下げて書きます。
初登場の人物はフルネームと年齢を表記します。
ト書きのコツは「カメラワークを意識すること」です。
さらに具体的に言うと、映像的な表現を意識することです。
初心者の方はト書きを小説の地の文と勘違いしてしまいがちです。
例えば、これはよくない例です。
亜門が本当の父だと知った太郎はショックを受けた。
一見して違和感がないように思えます。しかしこれは極めて小説的な表現であり、ト書きではありません。
これを映像で表現するには、
亜門、太郎に一枚の紙を渡す。 太郎、受け取る。 太郎「……」 亜門「私とお前のDNA鑑定書だよ」 鑑定書には『鬼越亜門は桃井太郎の生物学上の父親であると肯定できる。』と書かれている。 太郎「あんたがオレの父親……?」 亜門「やっと会えたな、わが息子よ」 太郎「ふざけるな!」
というように、セリフも使いながら映像で観客に見せるように描写しなくてはなりません。
とはいえト書きは柱やセリフと比べて自由度が高く、製作陣に作品の雰囲気を伝えるために抒情的な表現を書く人もいます。
ト書きをどの程度まで書けばいいのかについては、まずは基本ルールである映像的な表現を心がけながら、自分なりの書き方を見つけていくのがいいでしょう。
セリフ
セリフは「」(かぎかっこ)で囲み、文頭に話す人物名を表記します。
セリフが複数行になる場合、2行目以降は1文字下げて書きます。
「!」「?」など感嘆符の後ろは1文字空けて次のセリフを書きます。
セリフの文末に句点は必要ありません。
セリフのコツは「説明セリフにならない」を意識することです。
説明セリフとは作者が何かを説明するために、キャラクターに言わせている不自然なセリフのことです。
「観客に状況や設定を説明したい」「ストーリーを展開させたい」そう思うあまりセリフが説明的になってしまい、リアリティのない作品になってしまいます。
そうならないためにはキャラクターの感情を想像し、「自分がこのキャラクターならどんなセリフを言うだろうか」と意識しましょう。
また、説明はセリフだけに頼らず、ト書きも活用するようにしましょう。
例えば、主人公が怒るシーンを書くとして「私は怒っている」というセリフを書くよりも「机を蹴り飛ばす」という行動を描写します。
そうすることで怒りを自然にわかりやすく表現することができます。
脚本テンプレート無料配布
これまで脚本の書式や形式について解説してきました。
しかし「設定が面倒」「やり方がわからない」という方もいると思います。
そんな方のために脚本の一般的な書式を使ったテンプレートをご用意しました。
使い方
書式は20字×20行で、ページ番号が挿入されています。
wordファイルを開き、「ホーム」>「スタイル」を選択します。すると「柱」「ト書き」「セリフ」の項目があります。
それぞれを選択すると形式が自動変更されるため、文字を下げるなどの面倒な作業が不要になります。
既存の文章に適用することも可能なので、みなさんの書きやすい方法でお使いください。
シナリオの書き方に関するよくある質問
ここからはシナリオの書き方に関するよくある質問に答えていきます。
端役にも名前が必要ですか?
A:登場人物全員に名前をつける必要はありません。
1つのシーンだけにしか登場しない人物などは男A、男Bとすればいいです。
ただし役者目線で考えるなら名前はあったほうがいいです。
なぜなら男Aとして演じるよりも、山波健一郎として演じる方が役をイメージしやすいですし、モチベーションも上がるからです。
場所が同じシーンで時間経過を表現したいときはどうすればいいですか?
A:“×××”の記号で時間経過を表現することができます。
例えば、
◯廃ビル(夜) 太郎、入ってくる。 男の声「遅えぞ」 太郎、声の方を向くと十数人の男たち。それぞれ金属バッドや鉄パイプを持っている。 太郎「とんだお出迎えだね(と構えのポーズ)」 男たち、一斉に太郎めがけて走ってくる。 × × × 地面に転がる男たち。 息を切らして立っている太郎、ひとりの男の胸ぐらをつかんで。 太郎「鬼越はどこにいる?」
といった感じです。
他にもテロップを入れたり、小道具を使うことで時間経過を表現することができます。
回想ってどう書くんですか?
A:一般的には柱に回想であることを示し、回想が終わったときはそのことを表します。
例えば、
◯鬼越組・事務所 太郎、呆然とDNA鑑定書を見つめている。 亜門、イスから立ち上がり、ゆっくりと部屋を歩き回る。 亜門「お前が生まれたのは俺がまだ若頭だった頃だ」 ◯路地裏(亜門の回想・18年前) ヤクザ2人が男に金の取り立てをしている。 亜門、後ろでそれを見ている。 携帯の着信音。 亜門、ポケットから携帯を出し、電話に出る。 亜門「悪いな、今仕事中なんだ」 女の声「子供、できたみたいなの」 ◯元の鬼越組・事務所 亜門「だが、俺は3代目の娘と婚約していた。組長になるためにはそうするしかなかったんだ」 太郎「……」 亜門「俺は女に子供を堕ろすように言った。だが、あいつは絶対に産むと聞かなかったんだ」
こんな感じです。
回想の表記の仕方にはこれといった決まりはなく、脚本によって様々です。いろんな脚本を読んでみて、自分に書きやすい方法を見つけてください。
回想は初心者が多用してしまいがちですが、無意味に使いすぎるとつまらないものになってしまうので注意が必要です。
ナレーションやモノローグの書き方は?
A:一般的に太郎N(ナレーション)「(セリフ)」や太郎M(モノローグ)「(セリフ)」と表記します。
太郎N「オレの名前は桃井太郎。みんなには桃太郎って呼ばれてる」
ナレーションやモノローグは物語の設定や人物の感情を伝えるのに便利です。
しかし、あくまで設定や感情はシーンで表現するものです。安易に使うのは控えましょう。
会話の中でちょっとした仕草を書きたいのですが
Aセリフの中に()で動作を指定する「かっこト書き」を使いましょう。
例えば先ほど少し出てきましたが、
太郎「とんだお出迎えだね(と構えのポーズ)」
これがかっこト書きです。
かっこト書きは多用すると読みづらくなってしまうので、使い過ぎには気をつけましょう。
その他にも質問などありましたらお気軽にお問い合わせください。
シナリオの書き方をより深く学ぶには
「もっとシナリオの書き方について知りたい」
「いろんな人の書き方を学びたい」
そういう方は実際にプロのシナリオを読んでみることをおすすめします。
プロがどんな書き方をしているのか、またそれがどんな映像に仕上がっているのかを学ぶことができます。
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