脚本においてセリフは物語の生命線です。上手なセリフは登場人物の個性や感情を表現し、物語を進行させる一方、セリフがいい加減だと視聴者の関心を削ぐ原因になります。この記事ではセリフの書き方について詳しく解説し、初心者でも理解しやすいように説明します。
記事を読み、視聴者の感情を揺さぶる名セリフを書けるようになりましょう。
セリフの基本的な役割
セリフの基本的な役割は、次の2つです。
- 登場人物の性格を表現する
- ストーリーを進める
登場人物の性格を表現する
セリフは登場人物の性格を表現する役割があります。「あっそ」など短くそっけないセリフはクールで内向的な性格を視聴者に与えます。「そうなんだ!ちなみにオレだったらーー」と淀みない長セリフを話すキャラクターは、自信に満ちた性格を印象づけることが可能です。
ストーリーを進める
セリフには物語の進行を促す重要な役割も果たします。キャラクターどうしの会話によって新たな情報が与えられ、物語が急展開することも多いです。ミステリーではさりげない会話が事件を解決するヒントになることがあります。感情のこもったキャラクターのセリフが主人公の行動を動かすきっかけになり、視聴者の興味を惹きつけるのです。
上手なセリフの特徴
上手なセリフの特徴は次の2つです。
- キャラクターの性格を表している
- 意味や目的がある
キャラクターの性格を表している
上手なセリフはキャラクターの性格がよく表れています。漫画『鬼滅の刃』で、栗花落カナヲは幼い頃に心を閉ざし、自分の行動をコインの裏表で決めていました。自分では何も決められないカナヲに対し、竈門炭治郎が次のセリフを口にします。
「頑張れ!!人は心が原動力だから心はどこまでも強くなれる!!」
このセリフを鬼舞辻無惨が話したとしたら、場が白けるか皮肉にしかなりません。妹を救いたい一心で成長してきた炭治郎が言うからこそ、カナヲの心に響いたのです。
意味や目的がある
上手なセリフには必ず意味や目的があります。作品はテーマやメッセージを観客に伝えることが目的です。脚本はシーンの連なりで構成され、シーンはセリフやト書きで構成されます。終盤の名シーンや感動的なセリフは、序盤から続く何気ないセリフの積み重ねで生まれています。
ドラマや映画の伏線が最もわかりやすい例です。序盤に何気なく発せられたセリフが、後のシーンで重要な意味を持ちます。
セリフで初心者が陥りがちな失敗
初心者はストーリー展開を急いで構成を重要しがちで、セリフまで意識が向きません。セリフを書く上で陥りがちな失敗として、次の3つが挙げられます。
- 説明セリフを書く
- キャラクターがぶれる
- 無意味なセリフを書く
説明セリフを書く
説明セリフとは、キャラクターが背景情報や設定を視聴者に伝えるセリフです。物語の設定を理解してうのに便利なため、初心者はついセリフで説明しまいます。セリフで説明することが必ずしも悪いわけではありませんが、キャラクターは観客が感情移入する存在です。
突然に不自然な説明セリフが入ると、観客は興味を失ってしまいます。ナレーションの挿入や構成、シーンを工夫することを心がけてください。
キャラクターがぶれる
ストーリーの構成に集中するあまり、キャラクターが言わないようなセリフを語らせて性格がぶれることがあります。内気で控えめなキャラクターが突然大胆で率直なセリフを言うと、観客は戸惑いを感じます。変化を描く際は、観客が置いていかれないような丁寧な描写を心がけてください。
無意味なセリフを書く
ストーリーと関係のない冗長な会話や無駄な相槌も、初心者にありがちな失敗です。会話を書いているうちに楽しくなって話が脱線すると、作品の軸が定まりません。観客を離脱させる原因になります。字数稼ぎのための相槌や意味のない会話は止めましょう。
改めて作品のテーマや構成を見直し、規定枚数に収まりきらないほど充実した内容を目指してください。
セリフの書く際のポイント
セリフを書く際のポイントは次の3つです。
- キャラクターを深く理解する
- セリフに頼りすぎない
- 観客の視点を意識する
キャラクターを深く理解する
観客を心に響くセリフを書くには、キャラクターの性格や背景を熟知する必要があります。キャラクターの内面を理解し、感情のこもったセリフが書きましょう。キャラクターを深く理解するには、脚本を書く前に、詳細な設定を決めておく必要があります。
おすすめは、主要キャラクターの履歴書を作成することです。生年月日や出生地、家族構成や人生の節目となる出来事などを設定することで、キャラクターをよりリアルに想像できます。プロの脚本家の中には、キャラクターの服装や趣味まで決めている人も多いです。
キャラクターの作り方については、以下の記事を参考にしてください。
・キャラクターの履歴書の作り方ー背景を考えて作品に深みを持たせようー
セリフに頼りすぎない
初心者はセリフのやり取りで物語を進めがちですが、映像作品は基本的に目で魅せるものです。「嬉しい、ありがとう」と言葉で表すよりも、何も言わずただ笑顔を見せる方が感情が伝わる場合があります。セリフに頼りすぎず、身振り手振りや表情の描き方も工夫しましょう。
セリフとト書きを組み合わせ、よりリアルなシーンを書き上げてください。
観客の視点を意識する
セリフを書く際は、常に観客の立場で考える癖をつけましょう。文字で書かれたセリフは読み返せますが、作品の中で観客は1度しかセリフを聞けません。難解な言い回しや専門用語は避け、シンプルでわかりやすいセリフを心がけましょう。
観客が聞いてどう感じるかという視点で、セリフの言い換えたり、説明を付け足す工夫が必要です。相手をからかったり、いじったりするセリフを書く際は、特に注意しなくてはいけません。自分はからかうセリフのつもりでも、観客からしたらいじめと捉える場合もあります。
自分の書いたセリフを第三者の視点で見直し、わかりにくい部分や誤解を招く表現がないか確認しましょう。友人などに見せてフィードバックを受けると、より観客の視点を意識したセリフが書けます。
生きたセリフを書くテクニック
生きたセリフを書くテクニックは、次の3つです。
- 日常会話を研究する
- 書いたセリフを声に出して読む
- 他の作品のセリフを分析する
日常会話を研究する
人々の会話や交流を観察し、自然な会話のやりとりを脚本に取り入れると、リアルなシーンが書けます。カフェや公園などで他人の会話に耳を澄ませ、生きた言葉使いや間の取り方を研究しましょう。何気ない言葉からアイデアが生まれ、物語に発展することもあります。
日常会話は脚本の参考になりますが、セリフと日常会話は異なる性質であることを理解しておきましょう。私たちの日常会話は「あー、えっと」「あれってあそこにあるんだっけ」など、冗長で曖昧な表現が多いです。意図がある場合を除き、脚本のセリフは簡潔で明確でなければなりません。
日常会話を研究する際は、印象的な言葉遣いや性格や人柄を表すような会話に注目し、セリフの参考にしましょう。
書いたセリフを声に出して読む
セリフを声に出して読んでみるのも効果的です。文章でセリフを書くと、冗長で言葉使いが硬くなる傾向があります。小説なら許されるかもしれませんが、脚本のセリフは俳優が話すことを考慮しなくてはなりません。書いたセリフは声に出してみると、不自然な表現や話しにくい言葉使いが明確になります。
友人など第三者に読んでもらうことで、より客観な視点で捉えられます。セリフは何度も声に出し、自然で生き生きとした会話を作り上げましょう。
他の作品のセリフを分析する
素晴らしいセリフは、優れたドラマや映画作品から学ぶのが最も効果的です。自分が感動したり心に残ったセリフをメモし、魅力的な理由を分析してみましょう。ヒット作品のセリフを研究することで、良いセリフの条件や演出の仕方、観客の心を掴む方法がわかってきます。
作品分析はセリフだけでなく、ストーリーの型を身に付けられるため、プロの脚本家を目指す方には必須の作業です。プロの脚本家を目指したい方は作品分析を行い、一流の脚本家の書くセリフを学んでください。
作品の分析方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
・シナリオ作品を分析する方法は?【『ローマの休日』の実例をもとにわかりやすく解説】
コスパよくセリフが学べるおすすめ教材
セリフについて学びたいけど、あまりお金はかけたくない初心者の方は多いです。本章では、コスパよく一流のセリフが学べるおすすめ教材について解説します。おすすめの教材は次の2つです。
- 動画配信サービス
- シナリオブック
動画配信サービス
初心者が脚本のセリフを学ぶには、たくさんの作品に触れることが必須になります。映画館やレンタルでは出費が多くなりますが、動画配信サービスに加入すれば月額数千円で多くの作品が見放題です。ドラマや映画、アニメなど多様なジャンルの作品を視聴でき、場面に合わせた臨機応変なセリフの書き分け方を学べます。
おすすめの動画配信サービスはU-NEXTです。
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シナリオブック
シナリオブックも、一流のセリフを学ぶ上で効果的な教材です。書籍ならセリフを何度でも読み返し、言葉の響きやリズムを体得してセリフ力を高められます。セリフだけではなく、柱やト書きを読めるのもシナリオブック特有のメリットです。柱やト書きは映像作品では知ることができません。
巻末に脚本家の解説やインタビューがあるシナリオブックでは、制作の背景や裏話を学ぶことができます。シナリオブックは以下を基準にして選んでください。
- 好きな作品
- 好きな脚本家
- 関心のあるジャンル
1度鑑賞して好きだった作品は、観客としての純粋な感情と客観的な目線の両面でシナリオを分析できるため、学ぶべきことが多いです。尊敬する脚本家の作品は、テーマやキャラクター、セリフに共感する部分が大きく、自分が書くべき作品のお手本になります。
どのシナリオブックを買えばいいかわからないという方は、こちらの記事を参考にしてください。
・おすすめのシナリオブック10選!ーシナリオ初心者が参考にするべき作品を紹介ー
脚本の基本については以下の記事で詳しく解説しています。
・【テンプレート無料配布!】シナリオの書き方:フォーマット編
動画配信サービスとシナリオブックをうまく活用し、幅広い角度から生きたセリフの書き方を身に付けてください。
まとめ
セリフは物語の生命線です。キャラクターの個性や感情を表現し、ストーリーを進行させる重要な役割があります。上手なセリフには、キャラクターの性格が表れており、意味や目的があります。説明的なセリフやキャラクターの性格がぶれるセリフ、無意味なセリフは避けてください。
良いセリフを書くポイントは次の3つです。
- キャラクターを深く理解する
- セリフに頼りすぎない
- 観客の視点を意識する
キャラクターを深く理解するには、詳細な設定を決めることが重要です。セリフだけでなく身振りや表情も組み合わせ、観客が理解しやすいシンプルなセリフを心がけてください。生きたセリフを書くテクニックとして、日常会話を研究し、自分で書いたセリフを声に出すことが効果的です。優れた作品のセリフも分析も欠かせません。
コスパ良く学べる教材として、動画配信サービスやシナリオブックが挙げられます。U-NEXTなら31日間の無料体験期間があるので、この機会にぜひ活用してください。