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【必読】『「感情」から書く脚本術』をわかりやすく要約・解説

感情から書く脚本術 要約 解説おすすめシナリオ書籍

みなさんこんにちは、ムービー3分クッキングの時間です。

今回はカール・イグレシアス著、島内哲朗訳『「感情」から書く脚本術 心を奪って釘づけにする物語の書き方』を紹介します。

著者:カール・イグレシアスとは

脚本家、脚本コンサルタントであり、スクリプト・ドクターとしても人気が高い。

ページ上で感傷的な反応を引き起こす専門家。

UCLAの課外脚本執筆講座、スクリーンライティング・エキスポ、そしてオンライン講座であるライターズ・ユニバーシティで教鞭をとる。

クリエイティブ・スクリーンライティング誌にも定期的に脚本技巧について寄稿している。

著書に『脚本を書くための101の習慣』がある。

本書は2016年に日本語版が出版されてから現在まで多くの人に読まれてる本です。

しかし内容がやや冗長な印象があり、読みづらいと感じた人もいるのではないかと思います。

この本を読むべき人
  • 満足のいく作品が書けない
  • 何度か作品を書いているがコンクールに通らない
この本が向かない人
  • これから脚本を書こうと思っている
  • 初歩的なノウハウが知りたい

本書は基礎知識が頭に入っている中級者向けの内容になっていますが、この記事では初心者の方にもわかりやすいように解説していきますので、最後までお付き合いください。

わたしには必要ない記事だと思った方は、基礎的な内容が知りたいという方に向けた記事も書いているのでよろしければそちらもご覧ください。

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本書の重要なキーワード【感情】

本書の解説に入る前にみなさんに質問です。

映画をはじめとする映像作品は何を売っているかわかりますか?

少し質問を変えましょう。観客は何を求めて映画館に足を運ぶのでしょうか。

それはきっとワクワクしたりドキドキしたり、泣いたり笑ったりといった感情的体験を求めにいくのです。

ここで最初の質問の答えです。

つまり映画をはじめとする映像作品は感情的体験を売っているのです。

これがはっきりすれば、脚本家という仕事が何なのか見えてきます。

脚本家は観客の感情を掻き立てるのが仕事なのです。

本書には観客の感情を掻き立てるためのテクニックがたくさん紹介されています。

視聴者が抱く3種類の感情

視聴者が作品を面白いと思う感情は3種類あります。

まずはそれをきちんと理解していきましょう。

見たい

新しい情報や知らない世界について知りたい、登場人物の人間関係が気になるといった、好奇心に関わる感情です。

映画やドラマの場合、何が起きても所詮は作りごとだという安心感があるのでこの感情はより強化されます。

例えば、実際に鮫が泳いでいる海に入りたいと思う人はいませんが、『ジョーズ』を観ているときは安心して海に入った自分を想像できるといったことです。

わかる

共感。登場人物と感情が同化するという感情です。

視聴者がフィクションのキャラクターを通して作品を生きる。

すると、それは困難に立ち向かう誰かの物語ではなく、困難に立ち向かう私の物語になるのです。

感じる

理屈ではなく本能的な感情です。

視聴者がわざわざ作品を観るのには、頭で考えるよりも心で感じたいという思いがあります。

心の底から笑ったり、怖がったり、ドキドキしたり、そんな理屈抜きの感情を味わうためにお客さんはお金を払うのです。

あなたの書いた脚本にそのような体験が一定量含まれていれば、お客さんは「楽しかった」と満足するでしょう。

『「感情」から書く脚本術』の目次

本書は10のチャプターで構成されています。

  1. 読者:唯一のお客さん
  2. コンセプト:その物語にしかない魅力
  3. テーマ:普遍的な意味
  4. キャラクター:共感を掴む
  5. 物語:高まる緊張感
  6. 構成:のめりこませるための設計
  7. 場面:心を奪って釘づけにする
  8. ト書き:スタイリッシュに心を掴む
  9. 台詞:鮮烈な声
  10. 最後に:ページに描く

その中からわたしが特に重要だと思うコンセプトキャラクター構成台詞の4つに絞って解説していきます。

感情を動かすコンセプトづくり

コンセプトは作品においてかなり重要かつ、初心者が大抵つまづいてしまうところです。

作品のコンセプトとは構想やアイデアとも言いますが、要するにその作品を簡単に言い表すとなんて言う?ということです。

みなさんはいま自分の書いている作品に対してどんな作品かと聞かれたらなんと答えますか? 

その答えを聞いて「面白そう」と思ってもらえるか「よくある話だな」と思われてしまうかで、その作品の評価は十中八九決まってしまいます。

みなさんも友達からどんな映画か紹介されたものに対して、面白いと感じれば観に行こうと思いますし、面白そうじゃないと感じれば観に行きませんよね。

つまり脚本家はコンセプトの段階から観客の感情を掻き立てなくてはならないのです。

ハイ・コンセプト

コンセプトが売りの作品、コンセプトが脚本の中で最も訴える力の強いものをハイ・コンセプトと言います。

例えば、『スピード』という映画のコンセプトは、

時速50マイル以下にスピードを落とすと起爆する爆弾が市バスに仕掛けられた。しかも帰宅ラッシュがもうすぐ始まる

みなさんご存知『愛の不時着』のコンセプトは、

韓国の財閥令嬢がパラグライダー事故で北朝鮮に不時着する。そこで助けられた北朝鮮の軍人と恋に落ちる

ですね。

このように、ハイ・コンセプトとはそれを聞いた瞬間にわくわくし、頭の中に映像が浮かんできます。

いいコンセプトほどハリウッドでは重宝され、高値で売買されているのです。

ハイ・コンセプトの作り方

では、どうすればハイ・コンセプトを作ることができるのでしょうか。

本書ではそのヒントとして、ハイ・コンセプトに不可欠な要素を紹介します。

独創的で目新しいのにどこか見覚えがある

独創的で目新しいものが不可欠であることは言うまでもないことだと思うでしょう。

斬新なアイデアは私たちの遺伝子に刻み込まれた新しいものを欲しがる欲望を満たしてくれます。

しかしただ新しいものではなく、普遍的な感情の枠組みに納まるものであることが重要なのです。

裏を返せば、人間の普遍的な感情の枠組みに納まってさえいれば何を書いてもいいと言うことになります。

ウォルトディズニーとピクサーは、それによって成功したいい例です。

大ヒットした『ファインディング・ニモ』は主要キャラクターが海の生物です。

海での暮らしを体験したことのない私たちにとって魚の物語は目新しい情報に溢れています。

普段では私たちが魚が抱える葛藤を理解することはできませんが、もし登場人物の魚が妻を失い、疾走した一人息子を探し、腹を減らしたサメから命からがら逃げればどうでしょうか?

物語の主人公が人間でなくとも、わたしたち観客が理解できる感情体験である限りなんの問題もないのです。

感情を動かすキャラクターづくり

物語においてキャラクターほど重要な存在はいません。

みなさんは好きな人から言われる「好き」と嫌いな人からの「好き」はどちらが嬉しいですか? 

もちろん好きな人から言われる方が嬉しいですよね。

物語においても同じで「何を言うか」以上に「誰が言うか」が重要なのです。

私たちが物語で笑わされたり泣かされたりするのはキャラクターによってであり、プロットではありません。

しかし多くの脚本家がプロットや構成ばかりに気を取られ、キャラクターづくりに関しては疎かにしがちです。

もう一度キャラクターの重要性を理解し、どんなキャラクターが観客の心を動かすのか学んでいきましょう。

キャラクターの4つの型

共感されやすいキャラクターは4つの型に分けられます。

英雄型

英雄型の主人公は観客に対して優位に立ち、尊敬の念を抱かせます

自分に自信があり、迷うことなく行動します。

観客は英雄型の主人公を見て「私と同じだ」と思うのではなく、「あんな風になりたい」と憧れるのです。

スーパーマンやスパイダーマン、シャーロックホームズなどが英雄型にあたります。

普通の人型

普通の人型は観客と対等の関係を持ちます

自分に自信がなく、迷い悩み、立ちはだかる障害を乗り越えようと苦闘します。

観客はそんな主人公に共感し、自分を映します

アルフレッド・ヒッチコックは普通の人を異常な状況に置くことによって様々な名作を生み出しました。

主人公を普通にするときには必ずどこかユニークで複雑さを持った人格にすることがポイントです。

負け犬型

負け犬型の主人公は観客に対して下位に立ちます

どこか頼りなく、運が悪い。

だから観客はそんな主人公を守ってあげなければならないと思います。

負け犬型は同情、賞賛、 緊迫感を生み出すので観客の心を掴みやすいです。

『ロッキー』『フォレスト・ガンプ/一期一会』などがこの型に当てはまります。

罪深き者型

いわゆるアンチヒーロー、観客とは正反対のタイプです。

道徳的に問題があり、人間性の暗い側面を代表する人物。

人は誰でも心のどこかで人の暗い部分を垣間見たいと思っているので、このようなキャラクターは魅力的に映ります。

ただしこの型のキャラクターは簡単に好きになれる相手ではないので、義理堅かったり、強い動機やそうならざるを得ない過去があるなど、尊敬に値するような特徴を持たせることが必要です。

『ゴッドファーザー』『俺たちに明日はない』『タクシードライバー』などがこの型に当てはまります。

感情を動かす構成づくり

構成とは人の骨格のようなものです。

すべての骨が組み合わさり、そこに筋肉や神経、皮膚がくっつくことで人間になるように、構成にキャラクターやセリフ、ト書きが加わることで一つの物語になります。

ハリウッドは三幕構成が主流になっています。

三幕構成とは物語を「設定」「展開(対立)」「解決」の3つに分ける方法で、日本の序破急と似ています。

三幕構成については多くの本が書いていますが、本書は三幕構成の感情的反応という観点で、物語をどう構成すると観客の心を最も強く掴むことができるのか解説されています。

第一幕 関心をつかむ

第一幕で肝心なのは、観客の関心をつかみ、最後まで離さないことです。

そのためにはまずこの物語がどういった物語なのかをわかってもらう必要があります。

そして主人公に共感してもらい、主人公が抱える問題とジレンマを解決できるのかという期待を持ってもらいましょう。

きっかけになる出来事

第一幕で最も重要な要素です。

偶然、出会い、発見など、それによって物語のギアが変わり観客の関心に火を点けます。

この出来事のインパクトが強ければ強いほど、観客に「主人公はどうやってこの問題を解決するのだろう」と感じます。

『愛の不時着』ではセリがパラグライダー事故で北朝鮮に不時着するシーンがそれにあたります。

セリはどうなってしまうのか、無事に韓国へ帰れるのかと視聴者に思わせる見事な出来になっています。

第二幕 緊迫感と期待感

主人公が目標を達成しようと障害物や混乱を乗り越えて行動するのが第二幕なので、当然多くの出来事が起こります。

量的に最も多い幕であり、故に一番破綻しやすく書くのが難しい場所です。

障害物と混乱

主人公になんとか目標を達成しようと足掻かせるためには、障害物または混乱という形で主人公を足止めする対立が必要です。

この対立が大きければ大きいほど、観客の関心も高くなっていきます。

第二幕のクライマックス

主人公はそのつど決断を迫られながらも対立や混乱は深まっていき、そして第二幕のクライマックスで主人公はドン底や挫折、失敗を味わいます

物語の最も暗い瞬間です。

もう手詰まりだ、目標は達成できないのではないかと観客に思わせれば思わせるほど、第三幕でのカタルシスは大きくなります。

第三幕 満足

第一幕と第二幕で仕掛けられた問題が、第三幕で解決されていきます。

緊迫感は最高潮に達し、主人公はすべての対立を乗り越えます。

第一幕と第二幕できちんと感情的な要求に応えられて、第三幕でそれがきちんと解決されれば、観客の心は満足しているはずです。

感情を動かす台詞づくり

脚本の中で一番重要であると同時に、一番重要でないのが台詞です。

いいセリフがなければ魅力的なキャラクターを描くことはできませんし、いいセリフがあれば脚本の穴をごまかすことだってできます。

しかしキャラクター造形や構成ほど重要ではありません。

ラジオドラマなどを除いて、映画やドラマの脚本は耳で聴くものではなく、あくまで目で見るものなのです。

トーキーが登場する前の20年近く映画に台詞はなかったですし、アルフレッド・ヒッチコックは「映画の中身が固まったら、最後に台詞をつける」と言い、ウォルト・ディズニーもこれ以上物語から削ぎ落とすものがないと確信してから初めて台詞を考えたといいます。

このことを理解していない脚本家は多いと著者は言います。

1に構成、2に台詞。これをきちんと頭に入れたうえで、具体的な内容に移っていきましょう。

台詞を書くうえで重要なこと

台詞は最小限にとどめ、可能な限り視覚に訴えるように物語を語ることです。

いい台詞とは、感情が込められていて、その台詞によってキャラクターが立つようなものをいいます。

よく台詞のダメな例として「説明台詞になっている」や「台詞がくどい、長い」が挙げられます。

無理やり言わされている不自然な台詞ではなく、その人の生い立ちや置かれている状況から自然に出てくるような台詞を心がけましょう。

いい台詞を書くために

キャラクター造形を見直す

いい台詞が書けない原因として、まずそのキャラクター造形が甘いことが考えられます。

その人物がどんな人生を歩み、どんな葛藤を抱えているのかイメージできていれば、台詞は自然と出てくるようになるでしょう。

単刀直入に

いい台詞を書こうとするあまり、かえって台詞が観客に伝わりづらくなっている場合も多いです。

物語上の必要性があったり、そういうキャラクターであることを除いて、台詞は単刀直入のほうがいいです。

どんなに飾りつけようとも、シンプルで裏表のない台詞が一番響きます

みなさんも、どんなにきれいな言葉を並べられるより、「好き」とシンプルに言われた方が心に響くのではないでしょうか?

何度も書き直す

キャラクターに言わせたいことがわかっているのに納得のいく台詞が書けずにいる場合は、とにかく書き直しましょう。

どうすればわかりやすく伝わるのか、無駄な部分はないか、自分が思い描くシーンになるまで改善を続けましょう

声に出して読んでみる

書いた台詞を一度声に出して読んでみることも、台詞が上手くなるのに効果的です。

もし可能なら、自分以外の誰かに読んでもらうとなおいいかもしれません。

実際に読んで耳で聞いてみるとリズムが悪かったり、思っていたより長いと感じたりします。

他にも台詞が硬くないか、緊張感があるか、そして何より観客の感情を動かすことができるかどうか今一度確認してみましょう。

最後に

いかがでしたか?他にも様々なテクニックが実際の映画作品を例に紹介されているので、気になった方は本書を手に取ってみてください。

多くの作品を観ることが脚本家への近道

もっとも基本的かつ重要なシナリオ学習の方法は、1本でも多くの作品を観て分析することです。

作品をあまり観ない人がプロの脚本家になったという話は聞いたことがありません。

たくさんの作品を観ることでストーリーの型や感情の描き方が少しずつわかるようになってきます。

多くの作品をコスパよく観るには国内No.1の作品数を誇るU-NEXTを利用するのがおすすめです!

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