- 三幕構成について知りたい
- 三幕構成が使われている作品を知りたい
- 三幕構成を使って脚本を書きたい
物語を語る技術は、古今東西を問わず人々を魅了してきました。中でも、三幕構成は映画やドラマ、小説など、様々な物語創作の基礎となる重要な手法です。この記事では三幕構成の基本や序破急と起承転結の違いについて解説します。
この記事を読めば、数多くの名作が三幕構成をもとに作られていることがわかります。小説や脚本など、物語を創作するうえで役立つ内容になっているので、ぜひ参考にしてください。
三幕構成とは物語を三幕に分ける構成法
三幕構成とは、物語を3つの部分(幕)に分けて構成する手法です。本章では以下の3点を学びましょう。
- 三幕構成の定義と特徴
- 三幕構成の要素
- プロットポイントとミッドポイント
三幕構成の定義と特徴
三幕構成の起源はアリストテレスの「詩学」に起源を持つとされています。現代ではハリウッドをはじめ、世界中の映画やドラマの脚本で広く使用されています。日本でも三幕構成を採用している作品は多いです。
物語を第一幕(設定)、第二幕(対立)、第三幕(解決)の3段階で展開させることで、観客の興味を引き、緊張感を高める効果があります。各幕には明確な役割があり、物語の流れに沿って登場人物の成長や変化を描写します。
三幕構成の特徴は、物語の展開が論理的で理解しやすく、観客の感情を効果的に操作できる点です。物語に明確な方向性と目的を与え、観客を飽きさせず最後まで引き込めるため、多くの作家や脚本家に支持されています。
三幕構成の要素
三幕構成には、各幕に明確な役割があります。第一幕は、物語の舞台設定を観客に提示するのが主な役割です。主要キャラクターの紹介や、物語の中心となるテーマや課題も示されます。
第二幕は三幕構成のうちで最も長いパートです。主人公が直面する障害や葛藤が描かれ、物語の緊張感が高まっていきます。第三幕では、物語のクライマックスから結末にかけてが描かれます。各幕の役割に沿って物語を展開させると、観客に満足してもらえる作品を作ることが可能です。
プロットポイントとミッドポイント
プロットポイントとミッドポイントは、三幕構成において物語の展開を効果的に進める重要な要素です。物語にメリハリを持たせ、観客の興味を持続させる効果があります。
プロットポイントは物語の方向性を大きく変える転換点で、幕と幕の境目に2つ存在します。プロットポイントI(第1ターニングポイント)は第一幕と第二幕の境目に位置し、主人公が目標に向かって動き出すきっかけとなる出来事が多いです。物語の本筋への入り口となり、スムーズに第二幕へと観客の感情を誘導する効果があります。
プロットポイントII(第2ターニングポイント)は第二幕と第三幕の境目に位置しています。主人公が問題の解決策を見出すなど、クライマックスへ向かう出来事が描かれることが多いです。探偵が真犯人を確信するシーンなどが該当します。
ミッドポイントは第二幕の中間に位置し、ストーリーの前半と後半をつなぐ重要な事件やエピソードが描かれます。物語の方向性が大きく変わるポイントとして、主人公の行動や決意が変化するシーンが多いです。
映画『タイタニック』では、船が氷山に衝突する瞬間がミッドポイントとされています。事件の真相に近づくための重要な手がかりが誤解であるとわかる場面や、主人公の仲間のひとりが実はスパイだったと判明する場面などがミッドポイントであることが多いです。
三幕構成のメリットとデメリット
本章では三幕構成のメリットとデメリットについて解説します。
三幕構成のメリット
三幕構成のメリットは以下のとおりです。
- 物語の構造が明確で理解しやすくなる
- 多くのジャンルに応用できる
- 物語を効率よく組み立てられる
- 観客の感情に訴える作品が生み出せる
三幕構成の最大のメリットは、物語構造が明確で理解しやすい点にあります。観客は自然に物語の流れを追うことができ、作品に没頭しやすくなります。物語であればジャンルや長さに関係なく応用できる点も魅力です。物語の骨組みを効率よく組み立てられる点は、脚本家をはじめとしたクリエイターにとっては大きなメリットと言えます。
観客の期待に応える展開を作りやすく、感情的な起伏を効果的に演出できるのも三幕構成の魅力です。観客の満足度を高め、印象に残る作品を生み出すことができます。
三幕構成のデメリット
三幕構成には以下のデメリットも存在します。
- 形式的になりすぎる
- 物語が単純になる危険がある
- 意外性がなくなる恐れがある
三幕構成の最も大きな問題は、形式的になりすぎる危険がある点です。三幕構成の構造に縛られすぎると、独創性や新鮮さが失われてありがちな物語に収まる恐れがあります。複雑な物語や多層的なキャラクターを描く際は、三幕構成では不十分に感じるかもしれません。
三幕構成に慣れすぎた観客は、物語の展開を先読みしてしまい、驚きや新鮮さを感じないリスクもあります。作品を創作する際は、三幕構成を基本としながらも適宜変化をつけたり、他の手法を組み合わせたりすることが重要です。
三幕構成と他の構成法との違い
物語の構成法は三幕構成だけではありません。本章では三幕構成と他の構成法との違いについて、以下の2つを解説します。
- 三幕構成と序破急の違い
- 三幕構成と起承転結の違い
三幕構成と序破急の違い
序破急は日本の伝統的な構成法です。序(導入)、破(展開)、急(結末)の三段階で構成されます。三幕構成と似ていますが、序破急は時間の流れや緩急のリズムに焦点を当てているのが特徴です。
序破急では「破」の部分が最も長いのに対し、三幕構成では第二幕(対立)が中心となります。各段階の長さや内容の比重が異なるのが、三幕構成と序破急の大きな違いです。
三幕構成と起承転結の違い
起承転結は中国の詩論に由来する四段階の構成法で、起(導入)、承(展開)、転(転換)、結(結論)の要素で構成されます。三幕構成との最大の違いは、「転」の存在です。「転」は物語に予想外の展開をもたらし、読者や観客の興味を引き立てる役割を果たします。
三幕構成では、「転」に相当する部分が第二幕の中で徐々に展開されるのに対し、起承転結では明確な転換点として設定されているのが特徴です。
三幕構成を使った脚本の書き方
本章では三幕構成を使った脚本の書き方について、以下の3つを解説します。
第一幕の書き方
第一幕は物語の基礎を築く重要な部分です。主に以下の要素を観客に提示してください。
- 舞台設定
- 主要キャラクターの紹介
- 中心となるテーマや課題
第一幕の冒頭では、観客の興味を引くためのフック(導入部)を用意することが大切です。次に物語を動かす出来事を発生させ、主人公が冒険や挑戦に踏み出すきっかけを作りましょう。第一幕の終わりには、主人公が新たな世界や状況に足を踏み入れる決断をするプロットポイントIを設置します。
第一幕は全体の約25%を占めるように構成することが望ましいです。観客に十分な情報と興味を与えつつ、次の展開への期待を高めることを意識しましょう。
第二幕の書き方
第二幕は物語の中核を成す最も長い部分で、全体の約50%を占めます。主に以下の要素が必要です。
- 主人公が直面する障害や葛藤
- 主人公の成長過程
第二幕の前半では、主人公が新しい環境や状況に適応しようと奮闘する様子を描き、徐々に緊張感を高めていきます。物語の中間地点では、主人公の目標や方向性が大きく変わる出来事(ミッドポイント)を配置してください。物語に新たな展開をもたらすことで、観客の興味を維持することができます。
第二幕の後半では、主人公が更なる困難に直面し、最も低迷する時期を迎える場合が多いです。第二幕の終わりには、主人公が最大の危機に直面するプロットポイントⅡを設け、物語をクライマックスへと導きます。サブプロットや脇役の物語を織り交ぜると、物語に深みと複雑さを加えられます。
第三幕の書き方
第三幕は物語の結末を描く部分で、全体の約25%を占めます。主に以下の要素を盛り込んでください。
- 物語のクライマックス
- テーマに対する答えの提示
- 物語の主要な問題の解決
- 主人公の変化や成長
三幕の冒頭では、第二幕で直面した危機からの回復や、最終決戦への準備が描かれます。次に物語のクライマックスとなる場面が展開され、主人公と敵対者との決着がつけられます。クライマックスでは、物語を通じて積み上げてきた伏線や緊張感が頂点に達し、観客の感情を最大限に引き出すことが重要です。
結末は短く落ち着いた場面にし、主要な問題の解決や、キャラクターの変化、学んだ教訓などを示します。物語の余韻を残すエンディングで締めくくることで、観客に満足感と深い印象を与えられます。
三幕構成に関するよくある質問
本章では三幕構成に関するよくある質問をまとめました。
- 三幕構成が学べるおすすめの本は?
- 三幕構成の比率や時間配分はどれくらい?
- 三幕構成に当てはまる作品の例は?
- ジブリ作品は三幕構成を使用している?
三幕構成が学べるおすすめの本は?
三幕構成を深く学びたい方には、『映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術』がおすすめです。
著者のシド・フィールドは「三幕構成」理論を体系化した脚本家です。三幕構成について書かれた本は数多く存在しますが、本書が最も本質的で詳しいことは間違いありません。三幕構成についてだけでなく、テーマの決め方からリライトの方法まで、執筆に必要な要素が網羅的にまとめられているのも魅力です。
三幕構成を理解したい方や、ストーリー作りの基礎をしっかり学びたい方はぜひ本書を手に取ってみてください。
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三幕構成の比率や時間配分はどれくらい?
三幕構成の基本的な比率は、120分の映画を例にすると以下のようになります。
- 第一幕:30分(全体の約25%)
- 第二幕:60分(全体の約50%)
- 第三幕:30分(全体の約25%)
上記の時間配分はあくまでも目安です。作品のジャンルや内容によって異なるので注意してください。重要なのは各幕が役割を十分に果たし、物語全体のバランスが取れていることです。三幕構成で物語を作る際はプロットポイントやミッドポイントの配置にも注意を払ってください。
三幕構成に当てはまる作品の例は?
三幕構成に当てはまる映画やドラマで多いです。典型的な代表例として、ジェームズ・キャメロン監督の『タイタニック』の物語を三幕構成に当てはめて説明します。
第一幕は以下のとおりです。
- 現代のローズによる回想
- 若きローズとジャックの出会い
- タイタニック号の豪華さと階級社会の描写
- ローズの婚約者カルとの関係
- 自殺を図ろうとしてローズをジャックが救う(プロットポイントI)
第二幕は以下のとおりです。
- ローズとジャックの恋の発展
- カルとの軋轢
- 階級社会の問題が浮き彫りになる
- タイタニック号が氷山に衝突する(ミッドポイント)
- 船が沈み始め、パニックが広がる
- ローズとジャックの生き残りをかけた奮闘
- 救命ボートをめぐる混乱
- タイタニック号が真っ二つに割れて生存競争が始まる(プロットポイントII)
第三幕は以下のとおりになります。
- ジャックがローズを救うために自己犠牲を払う
- ローズを救助する
- 現代のローズが回想を終え、タイタニックの思い出とともに安らかに眠る
他にも、「スター・ウォーズ」シリーズや『ジュラシック・パーク』、『ショーシャンクの空に』など、多くのハリウッド映画が三幕構成を採用しています。名作の物語構造を分析してみると、三幕構成がいかに観客を魅了させるかが理解できるでしょう。
ジブリ作品は三幕構成を使用している?
宮崎駿監督をはじめとするスタジオジブリの作品は、必ずしも厳密な三幕構成に従っているわけではありません。しかし三幕構成に当てはめられる作品もいくつか存在します。代表的な作品として『千と千尋の神隠し』のストーリーを三幕構成に当てはめて紹介します。
第一幕は以下のとおりです。
- 千尋と両親が引っ越しの途中で不思議な町に迷い込む
- 両親が豚に変えられ、千尋が異世界に取り残される
- ハクと出会い、湯屋で働くことになる
- 千尋が湯婆婆と契約を結び、名前を「千」に変えられる(プロットポイントI)
第二幕は以下のとおりです。
- 千が湯屋での仕事に慣れていく
- カオナシとの出会いと騒動
- ハクの正体と過去の謎
- 千がハクを助けるためにゼニーバのもとへ向かう(ミッドポイント)
- ゼニーバとの出会いと成長
- 湯婆婆の赤ん坊ボーとの冒険
- ハクの正体が明らかになる
- 千が両親を救うための最後のチャンスを得る(プロットポイントII)
第三幕は以下のようになります。
- 千が湯婆婆の試練を乗り越える
- 両親が人間に戻る
- 千とハクの別れ
- 元の世界への帰還
以上の構成により、『千と千尋の神隠し』は主人公の成長と冒険を効果的に描き出し、観客を魅了する物語となっています。自分なりに作品を分析し、執筆の参考にしてください。
»作品の分析方法を詳しく解説!
まとめ
三幕構成は、物語を第一幕(設定)、第二幕(対立)、第三幕(解決)の3つに分ける構成法です。各幕には明確な役割があり、プロットポイントやミッドポイントを効果的に配置することで、観客の興味を引き、緊張感を高められます。
三幕構成の大きな利点は、物語構造が明確で理解しやすく、多くのジャンルに応用できる点です。一方で、形式的になりすぎる危険性もあるため、適宜変化をつけることが重要です。脚本を書く際は、各幕の役割を意識しながら、キャラクターの成長や物語の展開を描いていきましょう。
三幕構成は物語創作の強力なツールですが、縛られすぎないことも大切です。作家の創造性と組み合わせながら、観客を魅了する物語を生み出してください。